ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第4番

「ピアノ協奏曲 第4番 ト長調」、いい曲です。ピアノ協奏曲の中で私が一番好きな曲です。生演奏でも絶対聴きたいと思っています。

この第4番は、ベートーヴェンが創作意欲にあふれていた中期「傑作の森」の只中、ヴァイオリン協奏曲とほぼ同じ頃に作曲されています。"情熱"の第3番、"豪華"な第5番(皇帝)という派手な2曲の間で、第4番は対照的に美しくて親しみやすく、ベートーヴェンのロマンティックな面が楽しめます。

曲の形式にも、この曲からベートーヴェンらしい部分が現れます。
例えば、第1楽章冒頭からすぐにピアノ演奏が始まります。それ以前のピアノ協奏曲では、最初にオーケストラが主題を演奏してからピアノが引き継ぎます。まあ、それはそれでピアノの登場を楽しみにしながら聴けるというのもありますが、この第4番以降はもったいぶらずに単刀直入です。初演当時の聴衆たちはこれを聴いてやっぱり驚いたのでしょうか...

曲は冒頭「ターン,タ,タ,タ・・・」というピアノソロで始まります。このリズムは繰り返し出てきて展開されるので印象的です。ちなみに、このリズムをひっくり返すと「タ,タ,タ,ターン」となり、"運命"の主題になるそうです。なるほど。
先日聴いた交響曲第7番でも印象に残るリズムを多用してましたし、ベートーヴェンは象徴的で頭に残りやすいリズムをうまく使いわけてるようですね。

それから第4番以降、第2・第3楽章が続けて演奏されます。第2楽章の不穏なサスペンス風の響きから、第3楽章の明るく元気のいい旋律へとうまくつながっていて、緊張感を持ったまま楽しめます。ここが快感なんです。

前回の第3番に引き続き、iTunesを参考にしてみます。再生回数の多い順に並べてみると、以下のようになりました。ついでに一言加えてみました。

『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番&第5番』
ピアノ:ツィマーマン, 指揮:バーンスタイン
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


ツィマーマンのピアノもオーケストラもテンポ良く進み、全体的にもバランスが取れていると思います。クセがないので最初に聴く演奏としてはいいのではないでしょうか。

『ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 (第1弾)』
ピアノ:園田高弘, 指揮:大山平一郎
演奏:九州交響楽団


早いピアノタッチはカチッとした明瞭な印象で、聴いていて快感です。ライブ録音なので臨場感もあります。本当に生演奏聴きたかったです...

『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番』
ピアノ:ケンプ, 指揮:ライトナー
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


技巧的な凄さは感じませんが、流れるような美しさがあります。カデンツァがオリジナルなので新鮮です。渋谷のTUTAYAではレンタルコーナーにありましたが、Amazonでは売り切れのようです...
posted by stonez | 2005.03.31 00:32 | Comment(2) | TrackBack(3) | 音楽 - 協奏曲

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番

重く暗い旋律で始まります。
でも情熱的で、オーケストラもダイナミックに響きます。
ピアノのスケールは大きく、そして表情も豊かです。

ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番 ハ短調」は、曲全体の構成こそ第1番・第2番の流れを引き継いでいますが、中身は、それまでの2曲の上品な印象から一変して第4番・第5番に近く、堂々とした風格があります。

ふと「何でこんなに変化したんだろう?」と思い立って調べてみたところ、なんと第3番の作曲直前に、聴覚の悪化と失恋から「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれた、とあるじゃないですか!しかも、遺書を書いた段階で既に死ぬ気はなく、ピアニストから作曲家としての再出発を決意していたそうです。
そして彼の全盛期「傑作の森」はすぐそこです...

なるほど「苦悩から歓喜へ」、そういう経緯があったんですね。
どおりで、吹っ切れたような生き生きとしたベートーヴェンらしさを感じるわけです。
確かに第3番は全体的には暗めで苦悩している様子にも聞こえますが、最後は力強く、希望らしい光が差し込んで終わります。納得。しかも、ふと私のiTunesを見ると5曲あるピアノ協奏曲の中で一番多く再生しているというおまけ付き(^^;)

いくつか聴いた第3番の中で一番再生回数の多かったのは、園田高弘氏のピアノ独奏と大山平一郎氏指揮/九州交響楽団による演奏。今のところiTunesでの再生回数は実に31回!自分でもびっくり。
終楽章の最後、ピアノ・カデンツァ冒頭で鋭い速さで一気に弾き上げた後、ゆっくり、ゆっくり余韻に浸って、やがて盛大にフィナーレを迎えるのですが、ゾクゾク鳥肌きました。このCDはコンサートのライブ録音なのですが、拍手の中にお客さんのブラボー!が聞こえます(^^)自分もブラボー!を心で叫ぶ、通勤電車の中でした。

ピアノ協奏曲 (第1弾) ※第3番・第4番
作曲: ベートーヴェン

指揮: 大山平一郎
演奏: 園田高弘, 九州交響楽団
日本クラウン - 1999/07/23


そんな園田高弘氏の演奏を一度生で聴いてみたいと思っていました。
しかし、惜しくも2004年10月にお亡くなりになったとのこと、とても残念です…
心よりご冥福をお祈りすると共に、この言葉をお借りして締めくくりたいと思います。

理想を掲げる限り、茨の道の先にも光は見えると確信している。

園田高弘(ピアニスト)

posted by stonez | 2005.03.28 23:46 | Comment(2) | TrackBack(2) | 音楽 - 協奏曲

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第1番、第2番

ピアノ協奏曲の魅力はなんといっても"オールスターキャスト"による贅沢な演奏にあるのではないかな、と思ってます。通常のオーケストラに加えて、音域が広くて音に存在感のあるピアノまで参加するわけですからね。聴き終わった後の充実感、満足感はひとしおです。

ところで、例外もありますが「協奏曲」は18世紀(古典派)以降「急→緩→急」の3つの楽章からなる形式が定着しています。各楽章を掘り下げればさらに細かい形式等々あるようですが...確かにベートーヴェンの場合もだいたい、第1楽章は軽快・明快で、次の第2楽章は一息ついてしっとり聴かせ、第3楽章で再び明快になって華やかに終わる〜といった感じの構成になっていますね。

ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲」は番外編を除くと第1番から第5番までありますが、作曲された順番はこんな感じになります。必ずしも 発表(出版)順=作曲順 ではないのですね。
第2番 変ロ長調 作品19 1795年作
 ↓
第1番 ハ長調 作品15 1798年作
 ↓
第3番 ハ短調 作品37 1803年作
 ↓
第4番 ト長調 作品58 1805年作
 ↓
第5番 変ホ長調 作品73(皇帝) 1809年作

「第2番」と次の「第1番」は、ピアノ協奏曲でも初期に作られた2曲で、"傑作の森"と呼ばれるベートーヴェンの絶頂期に入る前に作曲されていて、"運命"や"皇帝"のようないわゆるベートーヴェンらしい雰囲気、というのはまだ出ていません。

「第2番 変ロ長調」は、さらっとした小気味よい感じですが、他のピアノ協奏曲と比べると、起伏が少なくて地味な印象といえるかもしれません。なぜかな、と思ったらティンパニやトランペットが入っていないんですね。ピアノ協奏曲は"オールスターキャスト"が魅力、とか言っておきながら最初から違ってました... この曲のイメージは一言で「暖かく晴れた朝の優雅な食卓」。月並みかもしれませんがまさにそんな感じです。軽い分爽やかですし、モーツァルトを思わせる雰囲気も漂います。もしかしたら、既にホテルの朝食ブッフェでBGMとして流れているかもしれませんね。

次に作曲された「第1番 ハ長調」も、小気味よく比較的規律正しい印象の曲ですが、第2番よりスケールアップしています。第1楽章の出だしこそ控えめですが、時に堂々と、それでいてゆったりしているので聴いていて疲れることなく気持ちよかったです。全体を通してとにかく爽やかで、古き良き古典派・・・な感じを残していると思います。

この2曲をマルタ・アルゲリッチのピアノとシノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団の演奏で聴きました。
アルゼンチン生まれのアルゲリッチさんは、自由奔放で情熱的な演奏をする女流ピアニストだそうですが、この演奏に関してはそんな印象はなく、ピアノとオーケストラ全体の調和を保った演奏を聴かせてくれています。

春または秋、穏やかな晴れた朝に聴きたい2曲です。
posted by stonez | 2005.03.23 23:42 | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽 - 協奏曲

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲

ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調」は、のちにロマン・ロランによって「傑作の森」と呼ばれた、ベートーヴェンの創作上の絶頂期に作られた曲で、他にも交響曲第5番(運命)、ピアノ協奏曲第5番(皇帝)といった、数々の名曲が堰を切ったように誕生しています。

なお、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキー、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は「4大ヴァイオリン協奏曲」と呼ばれていますが、数々の名曲を残してきたこの4人の作曲家は、面白いことに「ヴァイオリン協奏曲」をたった1曲しか作曲していません。

そんなベートーヴェン唯一のヴァイオリン協奏曲は初演当時こそ不評だったといいますが、それだけ時代に先駆けた作品だったのかもしれませんね。
現在ではこの分野を代表する曲として挙げる人も多く、私自身も好きな曲として真っ先に出てきますし、実際にコンサートにも足を運びました(^^)

横?(・みなとみらいホールにて行われたそのコンサート、終わってみればヴァイオリンを弾いているソリスト(漆原啓子さんでした)しか見ていなかった(^^;)ということで、当たり前ですが協奏曲ではソリストの役割は重要ですね。技巧や美しさなどのテックニックと、オケとの協調を両立させているわけですから奥が深いです。

さてさてヴァイオリン協奏曲ですが、その穏やかで美しい旋律や生き生きとした躍動感が全体を通して伝わってきます。
第1楽章と第3楽章は軽快に小気味よく楽しめ、第2楽章ではしっとりと聴かせる、このメリハリもいいと思います。また、第2楽章から第3楽章まで間をおかずに続けて演奏されますが、ここを途切れさせずに聴かせることで程よい緊張感を持続させてくれます。

この曲は原曲はヴァイオリンですが、この他にベートーヴェン本人の編曲によるピアノ版(ピアノ協奏曲 ニ長調)や、現代のフルート奏者ウィリアム・ベネットによるフルート版(フルート協奏曲 ニ長調)があり、いずれもヴァイオリン協奏曲を元にしているので、同じ曲をピアノやフルートのソロでも楽しむことができ、楽器本来の魅力をより感じながら聴くことができます。
また、カデンツァ(ソロ楽器による即興演奏)はそれぞれの楽器によって異なり、楽器の持つ音色や音域を最大限に生かした美しい演奏で楽しませてくれます。

そんなわけで、私が好きなCDをご紹介します。

Beethoven_vn.jpgヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 ほか
作曲: ベートーヴェン

アイザック・スターン(ヴァイオリン)
ダニエル・バレンボイム指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック, その他



本家本元のヴァイオリン版です。品のある重厚感たっぷりの音色でしっとりと聴かせてくれるアイザック・スターンの演奏には説得力があります。指揮者のバレンボイムはピアニストとしても(の方が?)有名ですし、彼のソロによる「ピアノ協奏曲 ニ長調」も聴いてみたいものです(^^)
なお、一緒に収録されている「ロマンス ヘ長調」は、女性雑誌MaquiaのCM曲として使われていました。

Beethoven_vn.jpgピアノ協奏曲 ニ長調 作品61 ほか
作曲: ベートーヴェン

オリ・ムストネン(ピアノ)
ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニック, その他



ピアノは音色がクリアで、しかも楽器の中でも一番広い音域を持っていることと、ムストネンの情熱的な演奏によって、ダイナミックで気持ちよく聴くことができます。
カデンツァもヴァイオリン版やフルート版に比べて長めになっていて聴き応え十分です。
<<追記 2005年3月24日>>
なんとオリ・ムストネンが今年5月末に東京オペラシティで来日コンサートを行うようです。今回のヴァイオリン協奏曲(ピアノ版)ではありませんが、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番などを、ピアノを弾きながら指揮するらしいです。「しながら」ってどんな感じなんでしょう??見たいです。まだ間に合うかな...高そうだな...

Beethoven_vn.jpgフルート協奏曲 ニ長調 作品61 ほか
作曲: ベートーヴェン

ウィリアム・ベネット(フルート)
スチュワート・ベットフォード指揮 イギリス室内管弦楽団



フルートの魅力は何といっても、透き通った美しい音色でしょう。
なのにベネットのフルートはオーケストラの勢いにまったく力負けしていません。
また、ゆったりとしたテンポでじっくりと聴かせてくれます。
フルート版は編曲者ベネットによるこの1枚のみのようです。
カップリングのジュヴィンドゥルのフルート協奏曲もメロディが美しく、聴き応えがあります。
posted by stonez | 2005.03.13 03:12 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - 協奏曲