ベートーヴェン/交響曲 第5番「運命」

クラシック音楽を代表する1曲といえるでしょう。「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン」の旋律は子供から大人まで、誰もが知っています。にもかかわらず、それ以外のところは専門家さんや、クラシックファンを除いてはおそらくほとんど聴かれていないのではないでしょうか。

このインパクトのある旋律を、ベートーヴェンさんが「運命がこんな感じで扉をたたく」などと表現したところから、後世の人に"運命"と呼ばれる事になったそうですが、それに加えテレビCMや効果音としてウケ狙いやパロディ目的で、この冒頭部分が使われてしまった結果、それが曲全体のイメージとして一人歩きしてしまった、というのもあるような気がします。"運命"と、「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン」があまりにマッチしすぎたのかもしれません。
これは<或るクラシックファンの雑記>さんでも触れられていますが、私も同意見です。ご参考までに。

そんな先入観のために、この曲の本当の良さが知られていないのは、なんとも残念なところです。
私も今まで聴いていなかった若気の至りでした。ああ、もったいなかった!でも、聴いてみてびっくり。「ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン」だけじゃないんです...聴いてみて、抱いたイメージはこんな感じです。(大丈夫かな...笑)
第1楽章:運命を受け止め、苦悩に明け暮れる。
第2楽章:でも冷静に受け止め、楽観的に捉えようとする。
第3楽章:危機感を持ちながらも模索を続ける。
第4楽章:光が差し込み、希望に満ち溢れてフィナーレ。
第3楽章の終わりは不穏で緊迫感に満ちていているのですが、その短調から第4楽章の長調に切り替わったとたんに一気に突きぬけて、ためていた苦悩を放出するような様子は、それはそれはもうドラマチックです。
この曲の本当のすばらしさは、ここにあるのではないでしょうか(^^)
聴覚の衰えを通して「運命を受け止め、模索しながら希望を見出そうとする」ベートーヴェンの生々しい生き様を想像します。作曲された時期も、聴覚の衰えが元で遺書を書いてから5年くらい経ち、全盛期(傑作の森)だったということで、もっとも創作意欲に満ちていた頃だったでしょう。

この曲は、先日他界された巨匠クライバーさん/ウィーンフィルの演奏でじっくり聴きこみました。オーケストラとの一体感があって聴きやすいです。録音状態もいいのだと思いますが、音がクリアで美しく、楽器それぞれの音がクリアに聴こえてきます。
それから、世界のオザワさん/SKOの演奏でも楽しみました。こちらは「圧倒的な推進力」とジャケットにもある通り、演奏にほどよいスピード感と勢いがあって、聴いているとそれが気持ちよさにつながります。

ぜひ一度、最後まで聴いてみてください、"運命"が変わること請け合いですよ♪

『ベートーヴェン:交響曲第5&7番』

指揮:カルロス・クライバー
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団




『ベートーヴェン:交響曲第5番ほか』

指揮:小澤征爾
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ



posted by stonez | 2005.04.24 02:23 | Comment(6) | TrackBack(2) | 音楽 - 交響曲

録音か、生演奏か

もともと、クラシック音楽を聴くようになったのは、親の部屋にあったレコードとステレオがきっかけでした。確か、最初に聴いたのはヨハン=シュトラウスの「美しく青きドナウ」だったと思います。ゆっくり流れていくような演奏を、33回転でゆっくり流れていくレコードを眺めながら聴いたのを思い出します。

それから時間が経ちレコードはCDやMDへ、そして音楽データとなってHDプレイヤーへ...形は多少変化しましたが、聴きたい時にいつでも聴ける手軽さは録音ならではです。しかも、常に同じ演奏のクオリティーで、繰り返し聴くことができます。

しかし、迫力ではなんと言っても生演奏にはかないません(^_^;)
それに生演奏では、音を出している張本人であるオーケストラの演奏や表情、緊張感漂う指揮者の身振り手振りといった視覚的な楽しみも味わうことができるのですから。

最近、クラシック音楽をよく聴くようになってからというもの、「気に入った曲は生で聴きたい!」と強く思うようになりました。先日聴きに行った時のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、それまでCDで聴いていた演奏とは違って、ヴァイオリンの音色が艶やかで綺麗だったんです!(ソリストが綺麗だったというのもあるかもしれません・笑)しかも全体の迫力は、もう雲泥の差。当然ノイズなんて入っているわけありませんしね(笑)
確かに演奏する人達の力量とかもあるのかもしれませんが「やはりライヴは違うんだな」と思い知らされたのでした。

本当は、持っているCDと同じ演奏者による演奏を、生でも楽しめれば最高の贅沢なんでしょうけど、演奏者があまりにもビッグネームすぎてチケットが取れない or 値段が高すぎて買えない!とか、昔の人すぎてもう生きていない!ということもあるでしょうからね...

まあそれはそれとしても、現在はいい時代ですね。録音、生演奏、それぞれの長所を生かして好きな時に好きなように楽しめるわけですから。ただ、本来は(生)演奏ありきで、それを録音するという順序ですから、録音を聴いただけで全てを決めつけてはいけないな、と思いますが...

将来、さらにもっと多様な楽しみ方ができる時代が来るのでしょうか。楽しみです。
posted by stonez | 2005.04.21 01:08 | Comment(2) | TrackBack(0) | いろいろ

ラヴェル/ボレロ

今日は、モーリス・ラヴェル作曲「ボレロ」です。この曲は元々バレエのために作曲されたそうですが、その非常に斬新な構造ゆえ今やオーケストラの定番ともいえる存在となっていますね。

何といっても、最後を除いて交互に繰り返される2つしかない旋律。そして小太鼓による全く変わることのないリズム。与えられた指示はクレッシェンド(だんだん強く)のみ。とにかくシンプルなフレーズで非常にとっつきやすく、徐々に盛り上がって演奏終了まで一気に楽しめるのが魅力です。

私にとってボレロは、"色々な演奏家を通して聴いてみたい!"と思うきっかけになった音楽です。というのも、構成そのものはシンプルなのに、演奏する人によって演奏スピードも曲の表情も違ってくるのです。で、この「演奏家による違い」を楽しもうと思った時に参考になるのが「演奏時間」です。

この演奏時間が短いか長いかで、「ノリノリ系なのか」「じっくりたっぷり系なのか」だいたい分かります。現在の演奏時間の主流は13〜15分あたりのようですね。ただ当の作曲者ラヴェルは、17分かけることを望んだといいます。15分でも結構ゆっくりに感じる演奏とかありますから、そうなると随分違った世界が楽しめることでしょう!

それでは私が聴いてきたボレロを、演奏時間の速い順に感想と共に並べてみます。

『ムソルグスキー:展覧会の絵/ラヴェル:ボレロ』
指揮:クリストフ・フォン・ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団
【ボレロ演奏時間:14分19秒】速いです(^^)快感といえる速さです。情感というよりは、ノリを楽しみたいときにいいと思います。オーケストラもよくコントロールされている感じで、きびきびしています。



『ボレロ!』
指揮:佐渡裕/コンセール・ラムルー管弦楽団
【ボレロ演奏時間:14分58秒】ラヴェル自身がボレロを指揮をしたという、フランスの由緒あるオーケストラです。佐渡さんのイメージ通り、生き生きとした熱い演奏が伝わってきます。記憶に残る演奏です。



『ボレロ〜ラヴェル:管弦楽曲集』
指揮:シャルル・デュトワ/モントリオール交響楽団
【ボレロ演奏時間:15分13秒】ゆったりしていて、演奏もまとまっているので一番バランスが取れていると思います。デュトワさんのコンサートに一度だけ行く機会があったのですが、じっくり聴かせてくれる印象があります。



<<追記 2005年5月6日>>
『ボレロ(ラヴェル管弦楽曲集)』
指揮:シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団
【ボレロ演奏時間:17分10秒】ついに聴きました17分台!。もう本当にゆったり流してらっしゃって実に心地よい。でも最後の最後で猛烈にアッチェレランドがかかって、それはもう大興奮!。中毒になりますね。ラヴェルの希望した演奏ってこういうことなんでしょうか。

posted by stonez | 2005.04.19 23:59 | Comment(12) | TrackBack(3) | 音楽 - 管弦楽曲

ベートーヴェン/交響曲 第7番

とにかく軽快な曲です。気持ちを高揚させたいときにはうってつけです。
かのリストさんは「リズムの神化」と言ったそうです。はたまたワーグナーさんは「舞踏の聖化」と言ったそうです。 そういった賛辞が物語るように印象的なリズムが多用されていますし、なによりこの曲の特徴は、第1楽章の序奏以外は全て速いテンポで、というのが指示されていることです。

ちなみにこの曲は、充実した中期(傑作の森)の後、深刻なスランプに入っていたベートーヴェンが、それを打破して第九につづく晩年の重要な作品を生み出し始めた頃の作品です。

第1楽章(イ長調):ポコ・ソステヌート(少し保った長さで) → ヴィヴァーチェ(活発に速く)・・・荘厳でゆったりとした曲調で始まった後、変わって徐々にスピードアップし舞踏の世界へと入っていきます。

第2楽章(イ短調):アレグレット(やや速く)・・・実際はそれ程速くないのですが、はかなくも美しい旋律で、"不滅のアレグレット"と呼ばれているそうです。「ター、タ、タ、ター、ター」のリズムが一貫して使われています。

第3楽章(ヘ長調):プレスト(急速に) → アッサイ・メノ・プレスト(より急速に)・・・テンポとリズムのよい舞踏に入っていきます。徐々にスピードアップします。

終楽章(イ長調) :アレグロ・コン・ブリオ(快活に速く)・・・「タンタカタン、タンタカタン」のリズムで始まり、また多用されています。舞踏と緊張感は盛り上がりを増していき、最高潮を迎えて終わります。

このように、曲が進むにつれて徐々に激しさを増していき、第4楽章などはテンポも速い上に一定のビートを刻みながらヒートアップしていきます。盛り上がった宴会のようだ、というのも頷けます。さながらロックな感じです。

この曲は、クライバー/ウィーン・フィル、カラヤン/ベルリン・フィル、小澤征爾/SKO の順番に聴いていきましたが、それぞれに持ち味があって楽しめました。クライバーさんは音が美しく、バランスが取れていて聴きやすく上品な感じがしました。洗練された...という表現はこういう演奏を言うのでしょうか。
カラヤンさんは音楽そのものがしまっていて、心地良く聴けます。オケもテンポも見事に統率されているというのも聴いていて分かります。録音状態はこの中で一番よかったと思います。

その中で最も興奮させてくれたのはオザワさんでした。
なによりも、ライブ録音というのが大きいです。この曲の持つドライブ感を味わうならライブ以外にないと思うからです。テンポも軽快、曲が進むにつれてどんどん躍動感と重低音も増していきます。フィナーレを迎えて曲が終わる間もなく、聴衆による歓声が漏れて興奮に包まれる様子も、大いに鳥肌を立たせてくれます。多少音がこもった感じがするのも気にならないくらいよかったです。

この曲はきっとコンサートでは盛り上がるでしょう。
CDだけじゃなくて、生演奏を聴きに行きたいと強烈に思わせる一曲です。

『ベートーヴェン:交響曲第5番&第7番』

指揮:カルロス・クライバー
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団




『ベートーヴェン:交響曲第7番』

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団




『ベートーヴェン:交響曲第7番』

指揮:小澤征爾
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ



posted by stonez | 2005.04.13 00:51 | Comment(4) | TrackBack(4) | 音楽 - 交響曲

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番「皇帝」

"皇帝"というニックネームで呼ばれている通り、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調」は豪華絢爛な曲で、ベートーヴェンの全5曲のピアノ協奏曲の集大成というにふさわしいと素直に納得します。聴き終わったあと達成感につつまれます。

最初に作曲された「ピアノ協奏曲 第2番」と聴き比べると、明らかに雰囲気もスケールも違います。素人であるところの私の場合、まったく予備知識なしに聴き比べて、それが「別の時代の、別の人の曲だ」と言われたら納得してしまいそうです。

曲は冒頭、オーケストラが一斉に「ジャーン!」と鳴らした後、ピアノの派手なカデンツァで始まります。この最初の部分は、聴けば誰もが知っている部分だと思います。「あー、あの曲ね」「そうだよ、それそれ」、そういう曲です。
ちなみにカデンツァとは独奏楽器の即興演奏のことですが、オリジナルの楽譜には「即興禁止!」と書き込んであるそうです。それだけに、この『あらかじめ決められた即興』には、曲のイメージを決定づけるのに充分過ぎるほどの力が込められていると言えるでしょう。

その後に続く部分のメロディは、坂本九の大ヒット曲「上を向いて歩こう」の元になったそうです。確かに、『う〜え〜を〜向〜い〜て♪』の部分が同じです(^^)

続く第2楽章は、変わって穏やかで幻想的な曲調です。こうしてただ力強いだけの曲ばかりではなく、うまくメリハリをつけてクールダウンさせたりするところは、これまでのピアノ協奏曲共通の構成です。曲全体を、疲れさせずに聴きやすいものにしていると思います。前曲第4番に引き続いて、間をおかずに続けて演奏される第3楽章は明るく、華やかな旋律たちです。ピアノが生き生きと輝いています。やはり『何となく聞いたことがある』あたりは、さすがベートーヴェンなのでしょうね。

この曲の演奏は、ツィマーマン氏とグルダ氏と、ケンプ氏のピアノ演奏で聴きましたが、これがまた全然違っていて面白いです。ツィマーマンさんの演奏は規律正しい正統派なご様子。グルダさんの方は、人間味のある柔軟さを持った演奏という感じです。ケンプさんはゆっくりタッチで流れるような演奏です。ああ書いて表現するのは難しい...
まあ私個人的には、より"皇帝"らしいのはツィマーマンさんの方かなと思いますし好きですが、タイプの異なった演奏なので、気分によって聴き分けても面白いです。

ここまで書いてきました、5曲のベートーヴェンのピアノ協奏曲ですが、私はこの「第5番」から順に古い曲へと遡って聴いていったので、古くなるにつれて、曲が形式的になっていったり、曲調が上品になっていったり、スケールがこじんまりしていったりと、ベートーヴェンの人生と年月の移り変わりを想像したりできて、なかなか面白い聴き方だったんじゃないかなと思います。

『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番&第5番』

ピアノ:クリスティアン・ツィマーマン
指揮:レナード・バーンスタイン
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

『ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」』

ピアノ:フリードリヒ・グルダ
指揮:ホルスト・シュタイン
演奏:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
posted by stonez | 2005.04.04 02:04 | Comment(4) | TrackBack(1) | 音楽 - 協奏曲