リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」

週末のレイトショーで映画「キングダム・オブ・ヘブン」を観てきました。
海外版大河ドラマといいますか、十字軍時代のキリスト教世界から見た、聖地エルサレムを巡るイスラム世界との対立を描いています。現在に至る火種の原点ですね。宗教から距離をおいて、客観的に見られたと思います。迫力のある映像と音響でした。
余談ですが、イスラムの英雄サラディンを演じている役者さんがいい味を出していましたが、どうにもフランク・ザッパさんに似ていたのが印象的でした。まあ、これから見に行かれる方もいらっしゃるでしょうから、映画のお話はここまでに。

で、この映画を見終わって聴きたくなったのが、ロシアの作曲家・リムスキー=コルサコフ作曲の交響組曲「シェエラザード」。映画の舞台設定や音楽が、オリエンタルな雰囲気を持つこの曲をイメージさせました。演奏は、ロリン・マゼール指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で。マゼールさんによる演奏は、キビキビとしていて切れ味がいいので、聴いていて飽きません。私の好きな指揮者さんです。

この交響組曲「シェエラザード」は、あの「千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)」を題材にしています。
その昔、トルコにシャリアールという王様がいました。この王は、女性は不実のかたまりだと信じて、次々に新しい妃をめとっては一夜限りで殺してしまうという、暴君でした。
そこへ最後の王妃として嫁いできたシェエラザードは、殺されてしまわないようにと毎晩毎晩、おとぎ話や冒険譚を王に語って聞かせ、ついに王を改心させたのでした...と、これが千夜一夜物語です。

この曲は、「海とシンドバッドの船」「カレンダー王子の物語」「若い王子と王女」「バグダッドの祭り - 海、船は青銅の騎士のある岩で難破」の4曲からなっていますが、それぞれ情景が自然と浮かんでくるような繊細で広い世界観です。そして何と言っても切なくて雄大で、部屋を暗くしてボリュームを上げれば、自分の世界にどっぷりと浸れること請け合いです。

ちなみに、3曲目の甘いメロディは、私が前に自宅で使っていた電話機の保留音でもありました。美しくて、自慢の保留音でした。あまり使わなかったけど(笑)
posted by stonez | 2005.05.30 23:17 | Comment(6) | TrackBack(5) | 音楽 - 管弦楽曲

シューベルト/交響曲 第8番「未完成」

シューベルトの"未完成"交響曲。耳なじみも良くて美しい旋律ですし、形式としては"未完成"だとしても"完成"されている曲のようです。私がシューベルトの交響曲で一番最初に聴いた曲でもあります。

この交響曲は、シューベルトがシュタイエルマルク音楽協会の名誉会員に指名されたことへのお礼として、ヒュッテンブレンネルという人を通じて協会へ贈る予定で、第2楽章までのスコアを渡したものの、このヒュッテンさんは残りの楽章を期待して机の中にしまい込んでしまって30数年もの間眠ることになった...
ということですが、途中までの楽譜を渡したりすることってあるのか疑問ではあります。シューベルトさんと、この机の中にしまった人との関係にもよるのかもしれませんが。それに、第3楽章のスケッチもあるそうですし、次の交響曲(第9番・グレイト)もその後作曲されてますしね。

まあ、"未完成"となった理由がはっきりしないことも含めて、すべてがこの曲の魅力、ということかもしれないと思います。とにかくこの2つの楽章が素晴らしかったから、"未完成"なのに評価された、ということでしょう。

というわけこの曲を、ジュゼッペ・シノーポリ指揮/ドレスデン国立管弦楽団の演奏で。第1楽章は、意味深で存在感のある序奏です。それに続いて、懐かしいようなほっとする旋律がやってくるものの、暗雲とともに寂しさをともなって閉じます。なんとなく、なんですがベートーヴェンらしい雰囲気も感じます。第2楽章は優しくてメルヘンチックですし、やっぱりメロディがとても耳なじみいいですね。最後は穏やかに幕を閉じます。強いところは強く、繊細な部分は抑えられていて、比較的聴きやすい演奏だったと思います。

指揮者のシノーポリさんは2001年に、歌劇「アイーダ」を指揮中に亡くなられたそうで、54歳と、指揮者としてはこれからということを考えると残念です。ちなみに、シノーポリさんは、デビューも「アイーダ」だったそうで、「アイーダ」に始まり、そして終わったという何とも運命的なものを感じます。

yurikamome122さんによる記事です。確かに第2楽章は「穏やかに始まり、穏やかに終わる」というイメージ通りだと思いました。
シューベルト作曲、交響曲第8番「未完成」
posted by stonez | 2005.05.29 02:36 | Comment(6) | TrackBack(4) | 音楽 - 交響曲

R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピゲールの愉快ないたずら」

唐突ですが、一番最初に買ったレコードやCDって覚えてますか?

私の場合ですが、レコードはちょっとおぼろげですが、確か"イモ欽トリオ"あたりだった気がします(微妙...)で、最初に買ったCDはよく憶えているのですが、カラヤン/ウィーンフィルの「ペール・ギュント」でした。中学の音楽鑑賞の授業で気に入って即買いでした。ちょうどレコードからCDに移行する'80年代後半はカラヤンの最晩年でしたので、彼の活動に関する話題も結構あった頃だと思います。

そんな、初めて買ったCDの、輝くべき初めて聴いた曲は、ペール・ギュントより、朝♪...となる予定でしたが、なぜか1トラック目がリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピゲールの愉快ないたずら」だったのでした。
というわけで、今日はR・シュトラウス作曲の交響詩「ティル・オイレンシュピゲールの愉快ないたずら」...(一行で収まりませんでした)

曲とストーリーは、「むかし昔、ひとりのいたずら者がいての〜」という感じの演奏で語り出し、冒険といたずらを求めてティルの物語がはじまります。
はじめは可愛らしいいたずらの数々。「馬に乗って市場を駆けまわった挙句逃走」「僧侶に変装して、大衆にウソの説法をする」「騎士に化けて女性を口説く」などなど。その口説いたうちの一人を本気で好きになったものの、あっけなくフラれてしまい、腹いせに大衆への復讐を誓うのです。そして、いたずらがどんどんエスカレートしていき、演奏もクライマックスとなりますが、結局ティルは捕まってしまいます。迫りくる死の恐怖。強がって口笛を吹くティル。でも最後には縛り首となって息絶えてしまうのでした...曲はエピローグを迎え、「そんな彼のユーモアといたずらは、今も人々の心の中に生きているのじゃった」と歌い上げておしまい。

繊細だったり、豪快だったりするメロディや音色は、まるでストーリーが目に浮かんでくるほど印象的です。これにぴったりのアニメーションを作ってもらって、一緒に楽しんでみたいですね。カラヤン/ウィーンフィルの演奏は、一糸乱れずキビキビと、という印象です。迫力のある、"オーケストラ"という一つの楽器を聴いているようです。

余談ですが、"ティル"さんは14世紀頃に北ドイツに実在した職人さんだそうで、放浪していらずらを重ねたそうですが、最期は病死だったとのこと。ドイツでは人気のあるお話で、日本でいうところの「桃太郎」のような存在だそうです。ところ変われば、ということで大陸らしい奔放なお話ですね(笑)

yurikamome122さんがエントリーなさっています。ご紹介されている本場ドレスデンの楽団による演奏も聴いてみたいものです。
R・シュトラウス作曲、交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
posted by stonez | 2005.05.26 23:16 | Comment(8) | TrackBack(3) | 音楽 - 管弦楽曲

チャイコフスキー/交響曲 第5番

チャイコフスキーにとって、最期が迫る晩年に作曲された交響曲第5番には、「悲愴」や「マンフレッド交響曲」のように表題はついていませんが、一貫したテーマがあり、これは「運命の動機」だといわれています。交響曲"第5番"で、しかも"運命"・・・ときたら、やはり浮かぶのはベートーヴェンです。
ただ、私は「運命の動機」というのを最初は知りませんでしたが、度々登場する印象的な旋律なので、曲の主要なイメージだとは思っていました。とにかくこの"動機"は、装いを変えながら全ての楽章に登場します。

第1楽章は、さっそく序奏から「運命の動機」が短調であらわれます。その後は時に弱く、時に激しく不安で不穏な空気を作り出していきます。
第2楽章は変わって、美しくてドラマティックに展開するものの、暗雲のように例の"動機"が再登場。素直に楽観的にはなれない印象です。
第3楽章はワルツです。一般的にはスケルツォですが、バレエの曲でも有名なチャイコフスキーらしいところです。幻想的で、華やかで、でも少し切ない旋律です。その後再びあの"動機"がやってきますが、明るくゆったり、希望の兆しを感じさせます。
第4楽章は冒頭から"動機"です。控えめではあるけど、もはや曇りなく希望があります。そして徐々に展開していき、明るく堂々とした"動機"による勝利のファンファーレとともにフィナーレを迎えます。

曲の展開も含めて考えてみると、楽聖と謳われたベートーヴェンの「運命」とは全く無関係ではないかもしれません。ただ、それは全く気になることなく、チャイコフスキーらしいロマンティックで親しみやすい世界や、陰影のついた色々な表情が散りばめられているので、それが楽しめるのもこの曲の魅力だと思います。

この交響曲第5番を聴いたのは、リッカルド・ムーティ指揮/フィラデルフィア管弦楽団による演奏です。全体がよくまとめられていると思いますし、派手さは感じないものの、悠然としていて聴き終えた後はすっきり感があります。

この曲はいろいろな方が解説されていて、とても参考になりますのでリンクさせて頂きます。

ハイティンク指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管による演奏を詳しく解説なさっています。いつもお世話になってます。
yurikamomeが言いたい放題にしゃべるブログ/チャイコフスキー作曲、交響曲第5番
クラシック音楽のひとりごと/ハイティンクのチャイコフスキー 〜〜 交響曲第5番

実際に演奏されている、おさかな♪さんによる解説、楽しい舞台裏のお話です。
おさかな♪の音楽日記/チャイコフスキー 第5番
posted by stonez | 2005.05.24 00:04 | Comment(6) | TrackBack(2) | 音楽 - 交響曲

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より「そよ風によせて・・・」

映画『ショーシャンクの空に』。妻とその愛人殺しという"無実の罪"で終身刑となり、ショーシャンク刑務所に収監されたエリート銀行マンのアンディ(ティム・ロビンス)。しかし彼は希望を捨てず、自由になれる日を信じて毎日を生きていく。そんな彼と、古株の囚人レッド(モーガン・フリーマン)との友情、そしてそれを取り巻く刑務所の人々を描いた作品です。

スティーヴン・キング原作のストーリーといい、描写やキャスティングといい、とにかく私が一番好きな映画なのですが、その中で印象的なのが次のシーンです。

刑務所の図書館の司書を任されたアンディは、囚人達にも教育が必要と、根気強く州議会に手紙を送りつづけたのですが、ついに200ドルの予算を約束するとの返事と中古図書が送られてきます。その中に「フィガロの結婚」のレコードが。こっそり聴き始めて自由な気持ちになった彼は、放送室の鍵をかけ、ボリュームを一杯にし、看守たちの制止も聞かず刑務所全体に曲を響き渡らせるのです。
運動場にいた大勢の薄暗い囚人達が、スピーカーを見上げたまま立ち尽くす中、ゆっくりと降りそそぐ美しいアリア。そして青く澄み切った空。手の止める作業場のレッドたち。

親友の囚人レッドは、この光景をこう振り返っています。

俺はこれが何の歌か知らない
知らない方がいいことだってある
よほど美しい内容の歌なんだろう...心が震えるぐらいの
この豊かな歌声が我々の頭上に優しく響き渡った
美しい鳥が訪れて塀を消すかのようだった
短い間だが皆が自由な気分を味わった


「知らない方がいいことだってある」・・・私もこの映画を最初に見た時には、歌の内容を知りませんでした。でもそのとき美しいと思ったし、自由な気分に包まれたのを憶えています。

あのシーンで流れた曲は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」第3幕の二重唱『そよ風によせて・・・』でした。本当はこの歌は浮気者の伯爵をこらしめるために、主人公フィガロのフィアンセと伯爵夫人が偽の手紙を書く歌なのですが、イタリア語がわからないというのもありますが、そのメロディを今聴いてもそんな人間臭いドラマは微塵も感じさせません。

この映画で使用されている演奏は、カール・ベーム指揮のものです。最初はこのアリア聴きたさの為だけに、クラウディオ・アバド指揮/ベルリンフィルのCDを買ったのですが、テンポが速すぎて雰囲気を楽しめず、結局先程のカール・ベーム指揮/ベルリン・ドイツ・オペラによるCDを見つけ、映画と同じ演奏を楽しみました。歌劇「フィガロの結婚」は、是非一度生で見に行きたいと思っています。本物のフィガロを見たら、私はどういう感想を持つのでしょうか。

とにかく、曲の新たな魅力を発見できた貴重な映画だと思っています。
posted by stonez | 2005.05.20 22:03 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - その他楽曲

メンデルスゾーン/交響曲 第3番「スコットランド」

ドイツ生まれのメンデルスゾーンは、作曲家では珍しく家庭環境や才能に恵まれていたそうです。当時のヨーロッパの良家の子息は、一人立ちするために外国旅行をして見聞を広めたそうですが、メンデルスゾーンもそうして海外を旅し、それが彼の音楽家としての生涯や作品に影響を与えたようです。

先日とりあげた交響曲第4番「イタリア」は、彼がイタリアを旅したときに生まれたといいますが、今日は、彼がスコットランドを訪ねた時にインスピレーションを受け、その後じっくり12年の歳月をかけて作曲された、交響曲第3番「スコットランド」です。
この曲を聴いてみると、「イタリア」のように暖かくて、すがすがしいという雰囲気はありません。逆に、冒頭から何ともしめやかに演奏されていますし、どこか荒涼とした寂しさのようなものを感じたのでした。

イギリス北部に位置するスコットランドは、悲劇の女王メアリ・ステュアートの地としても知られています。
女王メアリは、生後間もなくスコットランド王として即位し、しかも若くしてフランス国王のもとに嫁ぎ、フランス王妃兼スコットランド女王となりましたが、早々に死別して帰国。その後は宗教を巡る争い、権力闘争に翻弄されながらもスコットランドを治めましたが、遂に反対派に追われてイングランドに逃れ、エリザベス女王に保護を求めました。

しかし、当時のイングランド国王であるエリザベス女王とは血縁関係にあり、イングランドの王位継承者でもあったメアリは、エリザベス女王暗殺陰謀の容疑をかけられて20年近くも幽閉された後、斬首刑とされてしまったのです。

メンデルスゾーンは、この悲劇の女王ゆかりの地をたずねてまわり、女王にまつわる数々の悲劇の舞台となったホリルード宮殿と、廃墟となった修道院を訪れたときに、この交響曲の着想を得たといいます。

この話を知ってから改めてじっくり聴いてみると、この第4番「スコットランド」の持つ物悲しさや荒々しさは、運命にもてあそばれ波乱の生涯を送った、スコットランド女王メアリの生涯そのものという気がしてなりません。
それに、よせてはかえす運命の荒波をイメージするのは、全部の楽章がソナタ形式で書かれていたり、全部の楽章が途切れることなく演奏されているからかもしれません。
でも、悲しい中にも時に美しい表情が垣間見えたり、素朴で明るい異国情緒が感じられたりと、聴けば聴くほど味が増し、惹かれていきます。

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。私がこれからもこの曲を聴いていく中で、さらにいろいろな表情を見せてくれるんじゃないかな、と思います。そして、そう思わせてくれたメンデルスゾーンと、オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団の演奏を聴いてよかったと思います。
posted by stonez | 2005.05.19 21:50 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - 交響曲

サティ/3つのジムノペディ

フランスの作曲家エリック・サティさんは、1866年の今日に誕生されました。今年で生誕139年。来年になったらば母国フランスやクラシックファンの間で「祝・生誕140周年♪」といった記念イベントとか行われるんでしょうか。というわけで、今日は私が知っている数少ないサティの曲、「3つのジムノペディ」です。

同時代の作曲家として、同じくフランス人のドビュッシーがいますが、この2人は仲が良かったようで、ドビュッシーがサティのこの「3つのジムノペディ」の1番と3番をオーケストレーションしています。評判が良いので是非聴いてみたいです。また、日本では以前TVCMでも使用されていたので、一般的にもかなり有名な部類に入るピアノ曲だと思います。

このネーミングは、サティが古代スパルタのお祭り「ジムノペディア」からとった名前だそうで、ルーブル美術館にある古代の壺の装飾画を見てインスピレーションを受けたのだそうです。でも、そんな曲名とは正反対で、しっとり落ち着いたピアノ曲です。サティは、静かにたたずむ壺の装飾画を見て、そこに「ツワモノどもが夢のあと...」のような儚さを見出したのでしょうか。

この「3つのジムノペディ」は第1〜3番までの曲からなるピアノ曲ですが、どれもシンプルな感じの音なのに、独特の世界を醸し出しています。全曲を通じ、同様のテンポ、雰囲気で進んでいきますので3曲続けて違和感なく楽しめます。そして、まるで押しては返す波のような感覚、そして、永遠に続く時間のような神秘的で不思議な錯覚に入り込んでいきます。通勤電車内でも目を閉じて聴いたら、その雑踏からしばらく開放させてくれるところがいいですね。

私が楽しんでいるのはフィリップ・アントルモンさんのピアノ演奏ですが、憂いがあって、余韻もたっぷり楽しませてくれていて好きです。他の人の演奏でも聴いてみたいです。

サティは比較的現代の音楽家に近く、ポピュラーな曲を除けば「奇妙」だと言われている曲がたくさんあるそうです。まあ彼自身が奇人変人さんだったと伺っておりますが・・・今日の139周年♪を期に、サティさんのディープな世界にも触れてみたいと思います。段々と、ですが・・・
posted by stonez | 2005.05.17 23:25 | Comment(6) | TrackBack(2) | 音楽 - 器楽曲

メンデルスゾーン/交響曲 第4番「イタリア」

なんでも、今日は松尾芭蕉さんが、あの"奥の細道"に旅立った日ということで、「旅の日」だそうです。

旅といえば、今時大袈裟に言うほどのことでもないですが、私はたった一度だけ海外に行ったことがあります。新婚旅行で行った南イタリアです。初めての海外がいきなりヨーロッパということで、ちょっと贅沢でした。

あの透き通った空に蒼々とした海。片言の挨拶でも喜んで応じてくれる、飾らない人々の暖かさ。お金と機会が出来たら是非また行きたいと思わせるようなところでした。

さて、イタリアといえば、メンデルスゾーンの交響曲 第4番 「イタリア」。先日のN響アワーでアンドレ・プレヴィンさんの軽やかな演奏を楽しみましたが、第2楽章がカットされていましたので、改めて聴き直しました。

オットー・クレンペラー指揮/フィルハーモニア管弦楽団による演奏です。何が凄いかって、このジャケット写真です。これは偉大な人にしか許されないアングル、これで偉大じゃなければおかしいくらいです(笑)。それに、その解説書にある文章がまた凄い。引用させて頂きますと、
もしも(メンデルスゾーンの)標準的な名演奏を求めるならば、なにもこのディスクでなければならない、ということはないはずだ。 (中略) それにもかかわらず、このディスクをあえて手にしたというのは、これがほかならぬクレンペラー指揮による演奏であるということに起因しているといえるのではあるまいか。

やっぱり...何かあるお方だと踏んだ私は、さっそくこの「クレンペラーのメンデルスゾーン」を聴いてみることにしました。もちろん初めてのクレンペラーさんなんですが、聴いてみると、なんかこう、厚みがあるというか、聴き応えがあります。

第1楽章は、イタリアのすがしい景色と晴天をイメージするような、軽やかなメロディです。昔聴いたことのある好きな旋律でした。
第2楽章は、短調の旋律なのですが、程よいテンポなので不思議と暗い感じはしません。
第3楽章はのどかで牧歌的な風景が見えてくるようです。時折遥かアルプスが見えるようなホルンの音色も楽しめます。
終楽章はサルタレロというローマ周辺で流行った舞曲だそうですが、情熱的なメロディです。

イタリアをいろいろな面から聴かせてくれ、是非また行ってみたいと思わせてくれるような、そんな「イタリア」でした。
posted by stonez | 2005.05.16 23:04 | Comment(9) | TrackBack(3) | 音楽 - 交響曲

ドビュッシー/「夢」「夜想曲」「ロマンティックなワルツ」

今日は晴れたり、曇ったり。そんな天気のせいにするわけではありませんが、怠けて過ごした一日でした。何も考えず、ゆったりと流れていく時間。
何となく、ドビュッシーのピアノ曲を聴きました。

まず「夢」。どことなく懐かしく、生まれ育った田舎の緑あふれる景色。遠くにそびえ立つ山。空は青いけどあまり暑くない。遠くからかすかに流れてくる、AMラジオの音。川辺に小さく見える子供たち。毎朝自転車を押して上った坂道。
目を閉じてこの曲を聴くと、昔の懐かしさが蘇ってきます。
この曲を弾くことができたら、気持ちいいだろうなぁ。

「夜想曲」。名前は夜ですが、昼間に聴いています。でも日があまり差し込まず、陰りのある部屋なので、こんな昼下がりに聴くのにはいいのかもしれません。わりと起伏がある曲なのに、不思議と心は落ち着いたままです。快適に過ごせている今の時期だからこそ、こんなにゆったり聴くことができるのでしょうか。

そして「ロマンティックなワルツ」。木立の並ぶ道を軽やかにステップを踏みながら進んでいきます。この曲はタイトルにもある通りロマンティックですが、どことなく不思議でそのなんというか、そう、不思議の国のアリスの世界に出てくる、奇妙なティーパーティ(笑)。そんな空想の風景が浮かんできたのでした。

ピアノはモニク・アースさん。パリ生まれの女流ピアニストです。やっぱりドビュッシーもフランスの人ですし、相性というか、曲から匂い立つような雰囲気、繊細な音色はさすがです。それから、これらの曲のように雰囲気を噛みしめながら楽しむ曲はゆっくり弾いて欲しいものです。私が聴きたいのは、モニク・アースさんのように4分以上で聴かせてくれる「夢」なのです。
posted by stonez | 2005.05.14 23:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

ヘンデル/組曲「水上の音楽」

久々に聴いてみました。トレヴァー・ピノック指揮/イングリッシュ・コンサートによる、古楽器ありの演奏ということで、チェンバロが聴けるのですが、この音色結構好きです。それから、ホルンも上品な響きです。体に優しい、心にしみわたる。嗚呼バロックな組曲です。

ところでこの曲で面白いのが、その背景にあるエピソードです。
ドイツのハレで生まれたヘンデルは、同時期のバッハが生涯ドイツで過ごしたのとは対照的に、イタリアに行ったりイギリスに行ったり、そして最期はイギリスで葬られるというチャレンジャーな生涯でした。

そんなヘンデルさんは、25歳当時に就いていた、ドイツ・ハノーヴァー選帝候の宮廷楽長の職を放って、しかも再三の帰国命令を無視して、イギリスのロンドンに居座っていたそうです。当時のロンドンはオペラや公開演奏会が盛んで、報酬も高かったそうです。なるほど。
そんな折、当時のイギリス国王アン王女が死去、なんと遠縁のハノーヴァー選帝候が新イギリス国王ジョージ1世となってイギリスにやってきたのでした。

気まずい(笑)ヘンデルは、ジョージ1世がテムズ川で舟遊び(水上での音楽会)をしているところへ出向いてご機嫌を伺うために、この壮大な組曲「水上の音楽」を演奏して王の喝采をもらい、和解することができましたとさ。めでたし、めでたし。
と、この話、細かいところでは諸説あるようですが、面白いですね。

ヘンデルさんのちょっと不純な動機(ごめんなさい)のおかげで、私も楽しむことができた、組曲「水上の音楽」でした。めでたし、めでたし。

蛇足ですが、高校の世界史で習ったのをせっかく思い出したので書いておきますと、先ほどのハノーヴァー選帝候だったジョージ1世(英語は話せなかったらしい)から始まるイギリス王朝を「ハノーヴァー朝」といい、その血統は現在のエリザベス2世女王まで受け継がれています。ところが第1次世界大戦でドイツと戦った際に、敵国ドイツの「ハノーヴァー」はちょっとね、ということで王宮の場所にちなんで、現在の「ウィンザー朝」に改められたのだそうです。
posted by stonez | 2005.05.13 23:49 | Comment(0) | TrackBack(3) | 音楽 - 管弦楽曲