少し早いですが、こんな快適で過ごしやすい夜のひと時に聴きたい、ラヴェルのピアノ協奏曲を。ピアノは、ハンガリーの鬼才ゾルタン・コチシュ。指揮はイバン・フィッシャー、ブダペスト祝祭管弦楽団です。
ラヴェルの最晩年に作曲された、このピアノ協奏曲はとにかく独創的。ムチの「バシッ」という音に始まり、まるで祭ばやしのようなピッコロをはじめとした軽快で楽しいメロディや、JAZZを思わせるピアノの第1楽章。そして、小太鼓のロールや速いピアノを軸に目まぐるしく楽器が入れ替わり演奏される、まるでサーカスを見ているかのような終楽章。
そんな、軽妙な両楽章に挟み込まれた第2楽章は、全く対照的。まるで夜のとばりが降りたあと、煌々と照らし出される澄みきった秋の月。そして、そこを吹き抜ける穏やかなそよ風を感じながら、ゆっくり過ぎてゆく時間は、秋の風情をたたえています。ふと、こんな句を思い出しました。
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
左京大夫顕輔(小倉 百人一首より)
コチシュのピアノは、なんといっても高度で鮮やかなテクニックがいいです。第1楽章のJAZZっぽい旋律は非常に難解そうですが、いとも簡単にサラっと弾いているかと思えば、第3楽章などは息もつかさず駆け上がったりしてワクワクさせてくれます。でも、対照的に優美な第2楽章は、子守歌のような自然さとやわらかさで歌いあげてくれます。ドビュッシーを奏でる時の、色彩豊かな演奏とはまた一味違った新鮮さです。懐の深さを感じさせてくれます。ちなみに、オーディオの音量が大きいままこの曲を再生すると、冒頭のムチの音にびっくりして心臓に悪いので気をつけましょう(笑)
リンクです。おさかな♪さんによる小劇場は秀逸だと思います。
おさかな♪の音楽日記/ラヴェルのピアノコンチェルト(G-dur)