
<日時・場所>
2006年7月9日(日)
横浜・みなとみらいホール
<演奏>
指揮:広上 淳一
ピアノ:弘中 孝
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
<曲目>
※故佐藤功太郎氏の追悼演奏
グリーグ/2つの悲しい旋律 より「過ぎた春」
ハイドン/交響曲第60番「うっかり者」ハ長調
モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」ニ長調
エルガー/創作主題による変奏曲「エニグマ」
「響きのポートレイト」。今回の演奏はまさにその通りでした。もちろん一番最初のグリーグは急遽、神奈川フィルの元主席指揮者でもあった故佐藤功太郎さんへの追悼として演奏されたわけですが、心のこもった弦の澄んだ美しさは、それすら一枚のポートレイトとして心に残るものでした。
で、プログラムに入ってまずはハイドンの「うっかり者」。終楽章でオケが突然チューニングを始めてしまうというこの音楽。もう期待以上に楽しませてくれました。序奏のあと突如ヴァイオリンがキコキコやりだし、指揮者の広上さんは楽譜を持ち上げてアタフタ、コントラバスは弓を振りながらプンプン、そういえばファゴットをブンブン振り回している方もいたような。私の隣の席の人はそこでむっくり起き上がりました。そんな中コンマスが立ち上がって、慌てたフリでチューニングを開始!それが終わると平然とスイッチが切り替わって、驚くほど充実した演奏に戻っていく。もちろんその「イベント」だけでなく、全体を通してハイドンはこんなにも生き生きと躍動するのか、ということに目からウロコでした。
続いて「戴冠式」。モーツァルトの晩年に作曲された晴れやかな名曲も、神奈川フィルにかかるとふっくらとしていて温かみのある表情になっていたのが印象的。それに乗って、ピアノの弘中さんは滑らかなタッチで誠実にモーツァルトの世界を紡ぎ出していきます。演奏後しきりにオーケストラを立てていらっしゃったところに、これまた温かい人柄を感じたのでした。
最後はエルガーの「エニグマ変奏曲」。これは本当に凄かった。一つ一つの変奏がまるで違った表情で迫ってきます。挙げだしたらキリがないのですが、第9変奏は鳥肌がたつほどの穏やかさでしたし、第12変奏の本当に優しいチェロの音色から、打楽器や果てはパイプオルガンまで入って大団円を作り上げる極上の第14変奏をはじめとして、ダイナミックレンジの広いことといったらありません。肌で感じるといいますか、腕に直接ビリビリ振動がきたことに驚き。それまでCDで聴いていただけでは、ここまで凄まじい起伏に富んでいたことに気がつきませんでしたし、パイプオルガンが登場することすら知りませんでした。
そんなわけで、どのポートレイトも神奈川フィルの底力を楽しむのに十分でした。そしてそれを引き出しつつ魅せてくれる広上さんの指揮も素晴らしかったと思います。最後に、コンサートの後に楽しい時間を過ごさせて頂いた皆様に感謝です。本当にどうもありがとうございました!
posted by stonez | 2006.07.10 22:43
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音楽 - コンサート