シューマン/ピアノ五重奏曲

昨日はシューマンの150回目にあたる命日でした。ということをromaniさんnarkejpさんに教えて頂き、しかも聴いてみたかったシューマンの室内楽でエントリーしたいと思っていたところに、出先のお店でさっそく見つけてきました。

その中から、ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44を。ボザール・トリオに、ドルフ・ベッテルハイムのヴァイオリンと、サミュエル・ローズのヴィオラを加えた録音です。

このピアノ五重奏曲は、シューマンの「室内楽の年」といわれているほど多くの作品が残された1942年、彼が32歳の時に作曲されていますが、その感情豊かでロマンティックな音楽からは、気力十分で充実していただろう様子がよく伺えます。

第1・第3楽章はロマンティックな美しさや軽快さをたたえ、シューマンの隠れた内面をたっぷりと写し出しているかのような第2楽章を挟み込んでいます。そして第4楽章はどこか吹っ切れたように元気な感情がどんどん現れて、全体を通してこれぞシューマンの醍醐味!、という贅沢な構成といえます。

ボザール・トリオはブラームスの室内楽を聴いてからのお気に入りですが、小気味よくスッキリ爽やかな演奏はやはり素晴らしいです。それからウキウキした気分を象徴するようなピアノがあったり、時折のぞく憂いの表情をチェロが見せてくれたりと、表情豊かなシューマンの世界をたっぷりと楽しませてくれます。
posted by stonez | 2006.07.30 23:31 | Comment(4) | TrackBack(3) | 音楽 - 室内楽曲

J.S.バッハ/2声のインヴェンション

息子が生後100日を迎え、昨日は『お食い初め』の儀式を親子3人、静かに行いました。とはいっても、本人は食べる「マネっこ」をするだけで実際には親が食べて、後日母乳を通してお腹に届くことになります。親は、魚の鱗やワタを取るのは大変だ、というのを身をもって学ぶことができました。親共々食事に困りませんように。

さて、海の日を過ぎても一向に降り止まない雨。J.S.バッハ作曲、2声のインヴェンション BWV 772a-786 を聴いています。アンドラーシュ・シフの弾くピアノ版。

各調の長短調からなる15曲のこの曲集は、高音と低音の二つの旋律がそれぞれ一方を追いかけたり、並んだり、逆に追われたりと、自在に絡まりあいながら美しい泉のように湧き出してきて、それが耳を通して体に染み渡ります。

バッハ弾きの名手といわれるシフは、1曲1曲がシンプルできっちり構築された感じのこの音楽を美しく、そして余韻の部分まで豊かに描き出しているように感じます。特に気持ち控えめな低音が、高音を追いかけていく時ににじみ出る、深い落ち着きと優しさは、それはそれは心安らかな空間といえます。

この音楽は、装飾音が演奏者の裁量に任されているとのことなので、きっと演奏者によって異なった味が楽しめそうです。チェンバロで聴くのもまた面白いでしょう。そうなるとこれはバッハが残した、楽想(インヴェンション)を膨らます格好のカンバスと言えるかもしれません。シンプルでいて奥深い音楽です。

Tags:シフ 
posted by stonez | 2006.07.24 22:24 | Comment(4) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

コープランド/ピアノ協奏曲

Macユーザの私にとって、忘れられない名前の作曲家がいます。その名はコープランド。20世紀アメリカの作曲家です。以前、Macではシステムの『開発コードネーム』が音楽系に統一されていた時期があり、Allegro、Rhapsody、Gershwinといった名前が知られていました。その中でも特に期待されながら実現しなかった次世代OS、それがCoplandなのです。

そんな、名前だけが一人歩きしていた作曲家の音楽を、今回聴いてみました。ピアノ協奏曲。ピアノはアール・ワイルド、指揮はアーロン・コープランド本人、シンフォニー・オブ・ジ・エアーです。このオケ調べたらトスカニーニでお馴染みNBC響の後継団体なんですね。1961年と古い録音ですが、意外にも良い音質です。

で、演奏はというと、常に協和音と不協和音のギリギリのところを彷徨いながら、自在に変化するリズムが媚薬のように徐々に効いてくる感じ。前半部分の、不穏な緊張感とエスカレートする高揚感。それが放たれて後半に入ったら、地団駄を踏んでみたり、いきなりスキップし始めたり、そうかと思えば仲間を引き連れ猛ダッシュ。そんな気ままな変化に乗じて現れる独特のドライブ。

アール・ワイルドのピアノは豊かなフレージングと絶妙なテクニックが効いているし、オケとの呼吸もぴったり。この音楽の性質からか弦楽器はあまり目立たないけれども、全体で1つのビッグバンドのような一体感があって、そこもアメリカらしいです。作曲者自身が表現したかった作品を楽しめたことにも満足です。

さて余談ですが、当時AppleがCoplandを断念し、とりあえず版としてリリースしたOSの開発コードネームはTempo。それから紆余曲折あって晴れて登場した次世代OSの、現MacOS X。コードネームはJaguar、Panther、Tigerとネコ科の猛獣に受け継がれて現在に至ります。

Tags:Copland 
posted by stonez | 2006.07.22 00:10 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 協奏曲

ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ 第1番「雨の歌」

今日は海の日。なのにあいにくの雨。3ヶ月を迎えた息子は、珍しくまだ熟睡中。最近では首も据わりはじめたためか、しきりに寝返りを打とうとするのですが頭が重すぎてできず、右横向きの状態で泣きながら時計回りに周ったりするようになりました。親は基本的には何もしないで見守っていますが(笑)。これからだんだん目が離せなくなりそうです。

そんな感じで、久々に静かにくつろいでいる後ろで流れているのは、ブラームス作曲、ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」。ヴァイオリンはヴォルフガング・シュナイダーハン、カール・ゼーマンのピアノ共演。

滋味。ブラームスの音楽を聴いていると、いつもこの単語が頭に浮かぶのですが、このソナタ第1番などまさにそう思います。豊かで深い精神的な味わいは、こういう雨の休日でこそ、よりじっくり堪能できるものなのかもしれません。この音楽、第3楽章に自身の歌曲「雨の歌」が引用されているのでその名前で呼ばれているそうですが、この部分だけでなく、第1楽章の冒頭から既に雨の(しかも小降りのイメージ)様子が想像できるほど、ぴたりと言い当てているように思えてきます。

第1楽章ではシュナイダーハンが高音を哀愁たっぷりに歌い上げ、ゼーマンのピアノが落ち着いた低音であたたかく支えていく。第2楽章では今度はピアノが深い落ち着きをたたえながら、ヴァイオリンの音色を導き出していく。第3楽章ではヴァイオリンとピアノが共に切々と悲しみを押さえた旋律を綴っていく。

主役のヴァイオリンと脇役のはずのピアノが「共演」し、器楽のソナタの枠を超えて色々な角度からさりげなく楽しませてくれる、これぞブラームスらしい渋い演出といえそうです。
posted by stonez | 2006.07.17 11:53 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 室内楽曲

ベートーヴェン/交響曲 第4番

先日所用で渋谷に立ち寄ったついでに、ぷらっと足を伸ばしたHMVで発見しました。前から気になっていた、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/シュターツカペレ・ドレスデンによるベートーヴェン・シンフォニーのコンプリートBOX、5枚セット + 1990円也 + 給料日明け ⇒ 即買いして参りました。輸入版で解説書とかは一切ありませんが、この際ベト様には不要でしょうということで。

で、待ちきれずにザザっとひと通り楽しんでみましたが、非常にまとまりのあるアンサンブルというのが第一印象。テンポは基本的には中庸。奇をてらわない堅実さは以前テレビで見たブロムシュテットのイメージと重なります。そういうこともあってか、特に偶数番の曲などを中心にグイっと惹きつけられるものがあります。

ベートーヴェンの交響曲第4番 変ロ長調 Op.60もそんな一曲。『英雄と運命の巨人にはさまれた、美しいギリシャの乙女』とシューマンが例えたこの音楽。ブロムシュテット・SKDは、じっくりときめ細かい序奏を聴かせますが、ひとたびエネルギーを放出した後は、息切れすることなく鮮やかな疾走感で駆け抜けます。この速さはちょっと意外でしたが、お見事!当時プライベートが順調だったというベートーヴェンのウキウキ感そのままに、という感じです。

もちろん、これまた上機嫌のうちに書き上げたであろう第2楽章も、伸びやかな明るさで。SKDサウンドはこういうところでこそ本領発揮。綺麗なものをより美しく感じさせる丁寧な音作りはさすがです。それに、こういう緩徐楽章で気分を徐所に盛り上げていくティンパニの使い方などベートーヴェンらしさも堪能。

元気に上がったり下がったりする第3楽章は、性急にならずに楽器それぞれの音を十分に鳴らし、小刻みな速い動きのある終楽章では、テンポアップさせてラストならではの高揚感を引き出していく。そんな快活さが前面に押し出されているところでも、個々の楽器がしっかりとまとまっていて、弦にしろ管にしろ1本の楽器として耳に届きます。

蒸し暑くなってくるとベートーヴェンはちょっときついんですが(゚ε゚;)、でもしばらく手が伸びてしまいそうです。そうそう、録音されたルカ教会の残響音が、音の豊かな広がりにこれまた一役買っていることも付け加えておかなければ。
posted by stonez | 2006.07.14 23:19 | Comment(8) | TrackBack(1) | 音楽 - 交響曲

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第228回定期演奏会「響きのポートレイト」

<日時・場所>
 2006年7月9日(日)
 横浜・みなとみらいホール

<演奏>
 指揮:広上 淳一
 ピアノ:弘中 孝
 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

<曲目>
 ※故佐藤功太郎氏の追悼演奏
 グリーグ/2つの悲しい旋律 より「過ぎた春」

 ハイドン/交響曲第60番「うっかり者」ハ長調
 モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」ニ長調
 エルガー/創作主題による変奏曲「エニグマ」


「響きのポートレイト」。今回の演奏はまさにその通りでした。もちろん一番最初のグリーグは急遽、神奈川フィルの元主席指揮者でもあった故佐藤功太郎さんへの追悼として演奏されたわけですが、心のこもった弦の澄んだ美しさは、それすら一枚のポートレイトとして心に残るものでした。

で、プログラムに入ってまずはハイドンの「うっかり者」。終楽章でオケが突然チューニングを始めてしまうというこの音楽。もう期待以上に楽しませてくれました。序奏のあと突如ヴァイオリンがキコキコやりだし、指揮者の広上さんは楽譜を持ち上げてアタフタ、コントラバスは弓を振りながらプンプン、そういえばファゴットをブンブン振り回している方もいたような。私の隣の席の人はそこでむっくり起き上がりました。そんな中コンマスが立ち上がって、慌てたフリでチューニングを開始!それが終わると平然とスイッチが切り替わって、驚くほど充実した演奏に戻っていく。もちろんその「イベント」だけでなく、全体を通してハイドンはこんなにも生き生きと躍動するのか、ということに目からウロコでした。

続いて「戴冠式」。モーツァルトの晩年に作曲された晴れやかな名曲も、神奈川フィルにかかるとふっくらとしていて温かみのある表情になっていたのが印象的。それに乗って、ピアノの弘中さんは滑らかなタッチで誠実にモーツァルトの世界を紡ぎ出していきます。演奏後しきりにオーケストラを立てていらっしゃったところに、これまた温かい人柄を感じたのでした。

最後はエルガーの「エニグマ変奏曲」。これは本当に凄かった。一つ一つの変奏がまるで違った表情で迫ってきます。挙げだしたらキリがないのですが、第9変奏は鳥肌がたつほどの穏やかさでしたし、第12変奏の本当に優しいチェロの音色から、打楽器や果てはパイプオルガンまで入って大団円を作り上げる極上の第14変奏をはじめとして、ダイナミックレンジの広いことといったらありません。肌で感じるといいますか、腕に直接ビリビリ振動がきたことに驚き。それまでCDで聴いていただけでは、ここまで凄まじい起伏に富んでいたことに気がつきませんでしたし、パイプオルガンが登場することすら知りませんでした。

そんなわけで、どのポートレイトも神奈川フィルの底力を楽しむのに十分でした。そしてそれを引き出しつつ魅せてくれる広上さんの指揮も素晴らしかったと思います。最後に、コンサートの後に楽しい時間を過ごさせて頂いた皆様に感謝です。本当にどうもありがとうございました!
posted by stonez | 2006.07.10 22:43 | Comment(8) | TrackBack(1) | 音楽 - コンサート

リスト/交響詩「前奏曲」

前の会社にいた頃、社長から一枚の大きなカレンダーをもらいました。それは50年後までが一覧なったカレンダーで、月毎に一言書き込める空欄がついたもの。それを見て10年後、20年後に自分がどうなっていたいかを常に考えながら行動しなさい、という人生のアドバイスでした。

サッカー日本代表・中田選手の現役引退のニュースをあれこれ読んでいて、そのことを思い出しました。彼は常に(しかも相当前から!)数十年先、もしかしたら人生を終えるまで引っ張ったスケジュールを意識しながら、そのための準備を怠りなく冷静に実行に移し、その過程で得たものも継ぎ足しつつ引き続き進んでいくのみ、ということなのかもしれません。頂点を極めた選手生活は彼にとって「前奏曲」に過ぎなかったのかも・・・

なんてことを考えながら、リストの交響詩「前奏曲」を聴いてます。演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。

この交響詩「前奏曲」は、『我々の人生は死への前奏曲である』というフランスの詩人マルティーヌが作った詩の一節と関連しているそうで、生と死をテーマにした音楽となっています。不穏に始まり、やがて光が差し込む様子は誕生を想像させますし、それが荒れ狂う嵐によって死に向かうのもはっきり分かります。そこへ田園風景が広がってしばし癒されますが、それも束の間、戦いのラッパが鳴り響いて堂々としたマーチとともにズンズン盛り上がっていく。まさに4コママンガよろしく起承転結が明快です。

カラヤン/BPOは繊細な描写からズシンと響く迫力まで、その一方で歌いこむところでは伸びやかに美しく、本当に絶妙なさじ加減でツボを刺激してきます。ちょっと大袈裟とも思えるくらい、交響詩を交響詩らしく雄弁に鳴らしてくれます。

それにしても、この音楽みたいに劇的なハッピーエンドだったら、「それまでの人生は前奏曲であった」なんて言えそうですが。現状は「人生楽ありゃ苦もあるさー」という黄門様のテーマソング通りです。今後の中田選手に期待しますヽ(´ー`)、なんて偉そうなこと言ってられませんです。
posted by stonez | 2006.07.05 22:53 | Comment(4) | TrackBack(2) | 音楽 - 管弦楽曲

モーツァルト/ピアノ協奏曲 第9番「ジュノーム」

今日はN響アワーで岩城さんの追悼特集を見て、そのままの流れで芸術劇場に目をやると、今年の宮崎国際音楽祭の様子が。しかも、ジャズピアニスト小曽根真さんがソリストだと知って腰を据えて楽しむことにしました。指揮はお馴染みのシャルル・デュトワ。宮崎国際音楽祭管弦楽団。

小曽根さんは、以前J-Waveの番組で「クラシックの素晴らしさを改めて知った」とか「興味が湧いた」というようなことを言ってましたが、まさかこういう形で実際に登場していたとはつゆ知らず。彼がボストンで活動していた頃、目と鼻の先でボストン響を率いていた小澤征爾とは会ったことすらなかったと言っていたくらいですから。

というわけでモーツァルトのピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271「ジュノーム」。オーケストラのテーマに応えてさっそく、ピアノ登場。非常にしっかりしたタッチと明瞭な音色。私はこの曲は初めて聴きますが、とにかく天真爛漫なモーツァルトらしい明るさをたたえていますね。

と、カデンツァにきて仰天。それまでモーツァルトだったのがいきなりジャズになってる!これってジャズじゃないですか?きっとオリジナルじゃないですよね?でも格好いいなぁ、好きだなぁ!その後も何食わぬ顔しながらモーツァルトと小曽根真を行ったり来たり。こんなに多重人格なモーツァルトは初めてで、わくわくするような楽しい演奏でした。

引き続き、今度はショスタコの第10番を楽しんでます。
posted by stonez | 2006.07.02 23:52 | Comment(4) | TrackBack(1) | 音楽 - 協奏曲