ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番

あのバテるような暑さが過ぎ去り、今度は仕事が盛りあがってきました。そのうえ私は元々筆不精でした。などと言いつつ油断している間に一週間以上経ってしまいましたが、それはそれとして秋の醍醐味であるブラームスいってみましょう!

ブラームス作曲、ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83。ピアノはスヴャトスラフ・リヒテル、ロリン・マゼール指揮、パリ管弦楽団による録音から。あのリヒテルがまだ50代と若く、マゼールに至ってはまだ39歳という1969年の録音から。

まず協奏曲にしては珍しい4楽章構成ということと、ブラームスにしては明朗(笑)で軽やかで饒舌。とっても親しみやすいのですが、それはブラームスが風光明媚なイタリアを旅したときに着想を得たからでしょうし、ソリスト主導ではなくオケと対等で重厚な協奏曲を目指したこととも関係がありそうです。その甲斐あって心地よい音楽に気軽にじっくり浸れる、この喜びです。

アルプスから降り注ぐようなホルンに始まって、まるで交響曲みたいに存在感のある響きの第1楽章。そして第2楽章は強い情熱がピアノから、弦から、そして管から伝わってくるスケルツォ。そして一転、チェロとピアノのためだけに与えられた穏やかであたたかい第3楽章。諦観すら感じるアンダンテの調べ。これが聴けることがこの音楽の魅力でもあります。そして第4楽章は軽やかに弾んで踊るピアノとオーケストラ、本当に楽しそう。そしてそれが充実したクライマックスを導きます。

これまで聴いたいくつかの演奏では、勢いの出るオケに負けまいとするからなのか、ピアノが強くて力みすら伝わってくるような印象がありました。でもリヒテルは自然体というか、オケと共存している感じで聴き心地よく、ブラームスが意図したものに近いんじゃないかと想像します。マゼールのオケも、そしてチェロもこの対話を心から楽しんでいるように感じられます。
posted by stonez | 2006.09.29 20:00 | Comment(12) | TrackBack(2) | 音楽 - 協奏曲

ギャップレス再生とクラシック

最近は家庭の事情もあって、平日に聴く音楽はiPodとイコールです。それこそ持ってるCDをごっそり持ち出せるので満足ですし、圧縮データとはいえ音質もまあ問題ありません。ただ一つ、CDで聴くのと違いトラックとトラックの間に「すき間」が入ってしまうことがネックでした。それはクラシック音楽でいうと、楽章と楽章の間だったりするわけです。

例えばベートーヴェンの「運命」を聴いたとき、盛り上がりながらそのまま終楽章に突入するところで一旦「プツ」と切れてしまいます。仕方なく今は3楽章と4楽章のトラックをくっつけています。他にもシューマンとかシベリウスとかムソルグスキーとかショスタコとか、結構あります。初めて聴く音楽が切れてることもザラです。

それが、今回発表されたiPodとiTunes7で解消されました。無償のiTunes7はダウンロードしてさっそく浸りました。ただ、主役のiPodは最近の製品以降でないといけないので、いずれ買い替えたいなあと…。全面液晶iPodがまだ登場してないのが悩ましいところです。

とにかく、今回Appleが発表したあれこれは音楽を携帯するだけにとどまらない、楽しみ方の幅と深さがどんどん開拓されています。今後が楽しみです。

posted by stonez | 2006.09.21 22:45 | Comment(4) | TrackBack(0) | いろいろ

ウォルトン/オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」

外の雨の音だけが聞こえてきます。明日もお休み。こんな充実した時間を使わない手はない(笑)。そこで、芸術は爆発だ!系の音楽をiPodで聴いています。家族をおこさないように。

その音楽は、オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」。ブリテンと並ぶ20世紀イギリスの作曲家、ウィリアム・ウォルトンの作品です。

旧約聖書に登場するバビロン崩壊の物語を、3管編成のオーケストラに、2群からなる混声合唱団とバリトン独唱、それから吹奏楽に、果てはパイプオルガンまで動員して劇的に描く一大スペクタクルです。

巨大な迫力、いや破壊力が生み出されるクライマックスは、大きく2ヶ所。まずは、ユダヤ人が先代バビロニア王によってエルサレムを追われ、王都バビロンへと連行されてきてからの様子。今の王ベルシャザールによる傍若無人な振る舞いと、贅の限りを尽くした饗宴は、それはそれは豪華絢爛かつ退廃的。

2つ目はラストのハレルヤコーラス。その饗宴のさなか登場する謎の手が、王を裁く謎の文字を書き、その通りベルシャザールの死とバビロンの崩壊が訪れた時にやってきます。半狂乱と化した大合唱、そしてそこにある全ての楽器が音を発しているだろうエキサイティングな様子は、自由を取り戻したユダヤ人のこの上ない喜び大爆発なのでありましょう。

それにしても、不安、怒り、傲慢さ、不穏、熱狂といった感情や、時には王の死を示す叫び声まで上げる大合唱と、かつての手兵をはじめとした効果抜群の大編成をラトルは整然とまとめ上げ、それを力の限りぶつけてきます。さながら洗練されて勢いを増したマーラーのようでした。

ウォルトンは、クラシックだけでなく映画音楽の作曲家としても活躍したそうです。どうりで納得しました。ちなみにカラヤンは、この作品を「20世紀最高の合唱作品」と言ったそうですが、確かにカラヤン好きそう(笑)

■演奏・録音
指揮:サイモン・ラトル
演奏:トーマス・ハンプソン(Br)
   バーミンガム市交響楽団
   バーミンガム市合唱団
   クリーヴランド管弦楽団合唱団
録音:1997年 シンフォニー・ホール、バーミンガム
posted by stonez | 2006.09.18 01:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 - オペラ・声楽

ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲 第12番「アメリカ」

このところの雨で、だんだんと涼しさを感じるようになってきました。でも冷房が相変わらずの電車に乗って聴いたのは、ドヴォルザーク作曲、弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 Op.96「アメリカ」。パノハ弦楽四重奏団による演奏です。

異国情緒いっぱいの素朴で美しい音楽ですが、この音楽を最初に聴いた時、どちらかというと「アメリカ」より「中国」をイメージしました。それも煌びやかな宮廷を思わせる王朝時代風です。まあそれは、テレビか何かの作られた刷り込みかもしれませんが(笑)

作曲当時、ドヴォルザークは音楽院の院長としてアメリカに渡っていましたが、そこで関心を持ったネイティブアメリカンの民謡や黒人霊歌を作風に生かしつつ、チェコへの望郷の念もふんだんに織り込んで作曲されたようです。ちなみに、あの「新世界から」の第9交響曲も同じ年に作曲されています。

第1楽章。素朴だけれど豊かで伸びやかでどこか懐かしいメロディ。第2楽章。透明感があり、ドヴォルザークらしい心にしみる緩徐楽章。第3楽章。舞曲風のスケルツォ。時おり聴こえる小鳥の鳴き声が楽しい。第4楽章。より躍動感を増しつつも、中間部は一転して深い静寂に包まれる。

現在のチェコの代表的な弦楽四重奏団、パノハ四重奏団は、細やかで明朗な音色をもって率直に語りかけてくる演奏で、作品そのものの魅力が直接伝わってくるようです。彼らの大先輩にあたる、同じくチェコが生んだスメタナ四重奏団の哀愁をたたえた深い味わいとはまた違った魅力があります。
posted by stonez | 2006.09.14 01:57 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - 室内楽曲

ビゼー/歌劇「カルメン」

芸術の秋になりましたので、ここは一つ趣向を変えてオペラいってみましょう。ビゼー作曲、歌劇「カルメン」です。ライヴDVDにて。臨場感は生には叶いませんが、気軽に好きなだけ楽しめるメリットを生かして、本物を見る時の準備ということで。

もう「前奏曲」に始まって、最後まで「知らない曲がない!」という勢いでした。約3時間という普通の映画よりも長い時間があっという間で、あとはフランス人がフランス語で作ったスペイン風のメロディに乗って、スペインが舞台のストーリーに気分良く集中できました。

まずはヒロイン・カルメンのバルツァ。「恋は野の鳥」や「セギディーリャ」といった名アリアを色っぽく響かせるだけでなく、駆け回ったり叫んだりと演技も素晴らしい。そして自由に生きて死ぬというカルメンの生き様は、悪女というより感性に正直な自由人という感じ。死をいとわないほど凛としたところに魅力があります。

一方のホセは、最初こそ「アルカラ竜騎兵の伍長」でちょっとダンディを気取っている風ですが、カルメンにのめりこんでどんどん落ちていくちょいダメなマザコン男。ちょっと美味しくない役ですが、カレーラスが男の弱い部分とか葛藤をリアルに熱演。カルメンに愛をささやく「花の歌」など甘美で絶品でした。カレーラスがこの数ヶ月後に白血病で一時退くのが信じられません。

他にも、闘牛士エスカミーリョはニヒル(笑)でよく通る声だし、ミカエラも歌唱力と共にちょっとホセとホセのママにこびてる感じが面白かったし、という感じで個性の立ったキャラがテンコ盛りな人間模様でした。そしてレヴァインの小気味の良い軽快な演奏が素晴らしく花を添えていました。

それから、巨大で雰囲気たっぷりの豪華セットはさすがメト、というところでしょうか。ちなみに、今回のようにレチタティーヴォではなく地のセリフで物語が進行するのが、最近のカルメンの主流だそうです。

■主な配役
カルメン(Ms)・・・アグネス・バルツァ
ドン・ホセ(T)・・・ホセ・カレーラス
エスカミーリョ(Br)・・・サミュエル・レイミー
ミカエラ(S)・・・レオーナ・ミッチェル

■演奏・制作
メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団
指揮:ジェイムズ・レヴァイン
制作:1987年2月 メトロポリタン歌劇場(ライヴ収録)

■あらすじ
兵士ドン・ホセは、ミカエラという許嫁がいるのにジプシーの女カルメンに夢中になり、彼女の逃亡を助けたり、隊長に逆らったあげく脱走兵となって密輸団に加わる羽目に。一方、カルメンはホセに飽きてしまい、闘牛士エスカミーリョのもとへ。それでも諦めきれないホセは、闘牛場まで未練たらたら押し掛けるものの、逆上してカルメンを刺し殺して号泣...。
posted by stonez | 2006.09.10 23:44 | Comment(6) | TrackBack(1) | 音楽 - オペラ・声楽

ベートーヴェン/交響曲 第8番

秋篠宮妃紀子さまのご出産の知らせは、同じ年に生まれてきた子どもをもつ私としても大変嬉しく思います。本当におめでとうございます。ふと、私が子どもが授かった時、性別はどちらでも良いから母子共に健康であって欲しい、と願ったことを思い出しました。

今日という日に相応しい音楽はないかと思っていましたら、まだエントリーしていないとっておきがありました。気品をたたえていながら親しみもあり、実りある秋を感じさせてくれる音楽、ベートーヴェン作曲、交響曲第8番 ヘ長調 Op.93 です。ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団による演奏から。

第1楽章は颯爽と始まり、そして軽やかで美しい旋律がきっちりと構築されていく。ワルターの鮮やかで優しさに包まれた演奏、1958年の録音というのがとても信じられないような素晴らしい音質。印象的なこの音楽の「顔」です。

第2楽章。メトロノームを模しているともいわれる軽快なテンポが心地よい豊かな時間の流れを表しているよう。終わり方もチャーミングで可愛らしいです。

第3楽章はスケルツォではなく、ベートーヴェンには珍しいメヌエット。収穫を控えた田園の風景、悠然と澄んだおいしい空気を吸っているような気分になります。

第4楽章は軽快で広がりをもった展開。ワルターはゆとりを持って、じっくりかみ砕きながら、丁寧に音を作り出していきます。ベートーヴェンにしてはシンプルなこの音楽を本当に優雅に堂々と聴かせてくれました。
posted by stonez | 2006.09.06 22:43 | Comment(9) | TrackBack(2) | 音楽 - 交響曲