今日はジュゼッペ・ヴェルディの誕生日ということで、初ヴェルディいってみたいと思います。歌劇「椿姫」。オペラに詳しくない私が店頭で最初に手に取ったぐらいですから、相当人気の高い作品といえるでしょう。
この「椿姫」という名前はデュマ・フィスの原作のタイトルで、オペラ版の正式なタイトルは「ラ・トラヴィアータ(道を踏み外した女)」といい、ヴェルディ自身ヴィオレッタのような当時の社会から疎外された人物に光を当てています。これは19世紀当時の上流階級に警鐘を鳴らす目的があったようですが、遠く離れた21世紀の日本で見る私にとっては異国情緒漂う普遍的な恋愛悲劇です。ただ、それを彩るヴェルディの音楽が美しくて心地よくて、結果劇的な感動が残ります。
それにしても、このオペラはヒロインのヴィオレッタのためにある、と言えそうです。薄幸の美女というだけでなく、第1幕では華麗なコロラトゥーラを、第2幕ではしみじみと情感こもった歌声を、第3幕では絶望とともに消えゆく命を振り絞る歌声を魅せてくれるわけですから。ゲオルギューは、さすがに晩年のショルティに初めての「椿姫」をさせただけのことはあります。気品をたたえた美しさはもちろん、奥底に覗く儚さや寂しさがヴィオレッタと重なります。
ヴィオレッタに恋する青年アルフレードは、良くいえば純朴、言い換えると行動が短絡的で見ていてヤキモキしますし(笑)、田舎の温室育ちそのもののイメージでした。が、多くの見せ場と歌声を楽しめる役柄ではあります。子が子なら親も親というわけで、ジェルモンがまた風貌もぴたりで憎たらしさ全開なのですが、いかんせん素晴らしい歌を歌うんですよね。繰り返し見ていると、ストーリーは差し置いてそちらの魅力が勝ってしまいます。
以上の主要人物で主な物語が進むシンプルさですが、他にもヴィオレッタの友人フローラや、地味な女中さん、医療行為を全くしないヴィオレッタの主治医とか、夜会に登場する紳士淑女たち。非常に華やかです。そして忘れられないのはゴージャスで雰囲気たっぷりの夜会をはじめ、贅沢な舞台と演出は凄いの一言。束の間、非現実の世界に連れていってくれます。
■主な配役
ヴィオレッタ・・・アンジェラ・ゲオルギュー(S)
アルフレード・・・フランク・ロパード(T)
ジェルモン・・・レオ・ヌッチ(Br)
フローラ・・・リー=マリアン・ジョーンズ(Ms)
■演奏・制作
コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団&合唱団
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
演出:リチャード・エア
制作:1994年12月 コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス(ライヴ収録)
■あらすじ
パリ社交界の花形にして高級娼婦のヴィオレッタは、夜会で青年アルフレードと出会い真実の愛に目覚める。そしてそれまでの生活を捨て、素朴だが愛に満ちた郊外での暮らしに喜びを見出すが、そこへアルフレードの父ジェルモンがやってきて、家名を守るため息子と別れて欲しいと迫る。泣く泣く出て行ったヴィオレッタを、心変わりと勘違いしたアルフレードは追いかけて行って責めるが、誤解が解けて再会した時には、ヴィオレッタはまさに死を迎えようとしていた...。
posted by stonez | 2006.10.10 23:38
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音楽 - オペラ・声楽