モーツァルト/オーボエ協奏曲

朝晩などは特に寒さを感じるようになってきました。写真は仕事先の近く、五反田での1コマ。鳩の機敏な動きはちょっとコミカルで愛嬌たっぷりです。

このところは、先日放送されたドラマ「のだめカンタービレ」で登場した、モーツァルトのオーボエ協奏曲 ハ長調 K.314を聴いています。

この作品の楽しみの一つは、後から編曲されたといわれ、楽器の特性に合わせて1音上がった調のフルート協奏曲第2番(ニ長調)との聴き比べができることでしょう。穏やかで牧歌的なオーボエ協奏曲、対して明るく快活なフルート協奏曲と、楽器と調性の違いからくる魅力には甲乙つけがたいものがあります。

第1楽章、アレグロ・アペルト。オケの爽やかな主題のあとオーボエ登場。音階を駆け上がっていくときの身軽さ、そして柔らかくてほのぼのとした音色。メロディもモーツァルトらしく幸せでいっぱいだしオーボエの難しそうな技巧も音色に愛嬌があるので親しみやすいです。

ちなみに「アペルト」とは「はっきりと」の意味だそうで、明瞭で聴きやすいオーボエならではという感じ。そういえばオケのチューニングがオーボエのAから始まるのも、そんな理由だったりするのでしょうか。

続いて緩やかなテンポで格式高い雰囲気の第2楽章。ここではオーボエの優しい音色や、ヴァイオリンとの掛け合いから生まれる透明度の高い響きにため息。第3楽章は、おどけたようなオーボエから始まる軽快な楽章。遊び心を大事にしつつ聴き応えも十分です。

演奏は、オーボエがミシェル・ピゲ、ホグウッド指揮とチェンバロ、エンシェント室内管弦楽団。軽やかであたたかい古楽器による演奏です。
posted by stonez | 2006.11.30 22:03 | Comment(4) | TrackBack(3) | 音楽 - 協奏曲

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」

最近ジュニアは、夜泣きほどでもないですが夜中は2時間おきに目覚めるようになりました。まだ授乳中なので妻は大変です。私も何か協力できればと思うのですが、どういうわけか目が覚めません。B型だからでしょうか(笑)

このところはクラウディオ・アラウのベートーヴェンを聴いています。7大ピアノ・ソナタとして、主要どころを押さえたおいしいCDです。その中のお気に入りは、ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」です。

ベートーヴェンが苦悩から立ち直って、中期「傑作の森」を迎えた頃に完成されたこの作品は、当時最新鋭のピアノを贈られたことも手伝って、音域と技巧を追求した作品となっています。愛称は、ベートーヴェンにとって良き理解者であり援助者だったワルトシュタイン伯爵への献呈に由来するとか。

第1楽章、ズンズンという低音の連打、そこから高音へと登っていったあとの晴れ晴れした音色。アラウは遅めの一定したテンポを保って豊かに聴かせます。ベートーヴェンが、聴きようによってはJazzっぽくお洒落にすら感じられます。

第2楽章は深い瞑想の中へ。ゆっくりと、やがて心落ち着いて目を開けた時、自然と第3楽章に入り暖かな光が注ぎ込む。アラウはここでも勢いに走らず、悟ったような穏やかさをたたえています。それは徐々にまばゆさを増していき完成へと向かっていく。

アラウのピアノには独特の味があります。一見不器用で実直ですが、そこには何ともいえない温もりと、わくわく感があります。他にもっと変化に富んだ精密な演奏はあると思いますが、私はこの軽妙洒脱な味わいが好きです。
posted by stonez | 2006.11.24 02:03 | Comment(8) | TrackBack(1) | 音楽 - 器楽曲

サン=サーンス/チェロ協奏曲 第1番

またまた更新があいております。先週は「感染性胃腸炎」という、まあちょっとした食中毒みたいのにかかりまして、うなりながら仕事してました(汗)。ドクターによると、最近流行っているようで生の魚介類に注意が必要ということです。皆様もご注意を。

さて秋も深まり、憂愁ただようチェロの音楽をとりだしてみました。サン=サーンス作曲、チェロ協奏曲第1番 イ短調 Op.33です。チェロはジャクリーヌ・デュ・プレ、ダニエル・バレンボイム指揮、ニューフィルハーモニア管弦楽団です。

作品としては、わりと自然にまとまった1つの楽章になっていますが、実際には軽やかなメヌエットを技巧派サウンドでサンドイッチにした感じの3部構成となっています。後に第2番のチェロ協奏曲も作られているようですが、ほとんど演奏されないとか。彼が最初から完成された作曲家だった、ということのようです。

冒頭からチェロの情熱的なパッセージが炸裂。デュ・プレの才気溢れるテクニックを堪能。バレンボイムも相性良くそれを盛り立てていく。やがてチェロが憂いの表情を見せたとき、サン=サーンスらしいソフトで品のある旋律に切り替わって、チェロを始め弦楽器たちはすっかり安らいだ癒しの空間を作っていく。たっぷり英気を養った後は哀愁ただようため息から熱い感情の吐露まで、チェロとオケの百花繚乱。めくるめく鮮やかさのうちにフィナーレ。

才気あふれるチェロの名人芸と一緒に、サン=サーンスらしいちょっと不思議な曲想も楽しめる、コンパクトで親しみやすい作品です。
posted by stonez | 2006.11.20 00:24 | Comment(4) | TrackBack(1) | 音楽 - 協奏曲

ハイドン/交響曲 第88番「V字」

今週から仕事で五反田に行っています。この町に馴染みのない私にとっては歓楽街の印象しかありませんでしたが、実際に来てみると昼食には困らないし、本屋さんも多いし(ブックオフ含む)好印象です。写真は東急池上線の五反田駅。都内とは思えない昭和のレトロ感を今に残します。

さて今日は、そのブックオフで見つけてきた掘り出し物。ハイドン作曲、交響曲第88番 ト長調 Hob.I-88「V字」です。オットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団。1964年の録音から。

ハイドンは「交響曲の父」として知られている通り、その数、実に100曲以上の交響曲を残しているためか、主要なものにはニックネームがついていたりします。そしてそれは曲の内容を示す標題ではなく、たんなる識別用だったりすることが多いようです。この「V字」はというと、初版の表紙にアルファベットの「V」が書き込まれていた、というだけなんだとか。

この交響曲は、エステルハージ宮廷のお抱え音楽家だったハイドンが、外部からの注文に応えられるようになってからの作品ということで、ちょっと吹っ切れた肩のこらない感じがいいですね。厳かな序奏と、反対にユーモラスな旋律のオンパレードの第1楽章や、耳馴染みのよい爽快さが光る第4楽章の楽しさは言うに及ばず、それに挟まれた2つの楽章の素晴らしいこと。

まずは、メロディ・ラインの美しい第2楽章。シンプルな旋律が丁寧に奏でられていくさまと、ティンパニによるアクセントの妙。緩徐楽章にトランペットが入ることはハイドンにしては珍しいそうです。そして優雅ですぐにでも口ずさめてしまう第3楽章。ティンパニと木管の存在感が際立ちます。ベートーヴェン以前にこれだけティンパニが活躍する作品があったんですね。

演奏は、クレンペラーらしくエネルギッシュかつ整然とハイドンの品の良いところを引き出しています。テンポ設定も程よく自然な聴き心地です。それからヴァイオリンが対向配置となっていて、弦のふくよかさを十分に堪能できるところはさすがです。
posted by stonez | 2006.11.11 17:10 | Comment(10) | TrackBack(1) | 音楽 - 交響曲

モーツァルト/ピアノ協奏曲 第12番

ここしばらくは日本橋にある客先へ通っていましたが、移転に伴って先週末で終了となりました。写真は夜の日本橋。天井を覆っているのが首都高です。雨宿りには最適です(笑)。そして、この三連休は夫婦揃って風邪をひき寝たまま終了。

さて、今年はモーツァルト生誕250年目ということで、テレビでも特集番組をよく目にします。作曲当時の背景や世相を覗くことで、好きな作品を違う角度からも楽しめたり、まだ知らない素敵な作品に出会えるのは素直に嬉しいことです。

ところで、よく「モーツァルトらしい」という言い回しを目にすることがありますが、そういう時は、天真爛漫で美しく楽しいタイプの曲調を指すことが多いようです。ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414 は、私にとって今のところ最もモーツァルトらしいと思える作品です。

私が聴いている演奏は、マリア・ジョアオ・ピリスのピアノ、アルミン・ジョルダン指揮/ローザンヌ室内管弦楽団。1976年。軽やかで優しいピリスのピアノと、ふっくらしたあたたかみのあるオケのサウンドを聴いていると、モーツァルトがひょいと天国に登って拾い集めてきたのでは、と本当に思えてきます。

モーツァルト26歳当時、故郷ザルツブルクに別れを告げ、予約演奏会を収入源にウィーンに定住しはじめた頃の作品ですが、保守的なウィーンの聴衆に受け入れられるようにと気を遣って作られたのだそう。同じ演奏会用に作られた第11番、第13番と合わせて、父レオポルトに宛てた手紙でこう述べています。

・・・とても華やかで、耳に心地よく、自然で、空疎さとは無縁のものです。いたるところに識者を満足させるパッセージがありますが、識者でない人もなぜか分からないまま満足させてしまう方法で書いてあります(ライナーより)


まったくそうなんです。なぜか分かりません。もう少し音楽に詳しくなったらば、今とはまた違う満足を得られるかもしれません。では、おやすみなさい。
posted by stonez | 2006.11.05 13:58 | Comment(6) | TrackBack(0) | 音楽 - 協奏曲