
2006年最後の追い込み、今月は今年メモリアルイヤーの作曲家おさらい特集になってますが、今回はショスタコーヴィチです。オラトリオ「森の歌」Op.81。
今になってみると、解説書とかの予備知識なんて知らないまま聴いても面白かったかなと思いますが、とにかく作曲当時のソ連ではたぶん話題作、現在では評価の別れる問題作といったところじゃないでしょうか。
このオラトリオ「森の歌」は、自身の「
交響曲第9番」で招いた最大のピンチを逃げ切るための、いわゆる「起死回生の一発」でした。それは彼をピンチに追い込んだスターリンを絶賛して、その植林政策を賛美するというもの。これで一気に汚名返上、1950年のスターリン賞第一席というおまけもつきました。
それにしても、聴いててどうもショスタコっぽくないんですよね。妙にストレートで前向きというか、彼らしく、あれこれ巧妙なトリックが仕込んでありますよ的な雰囲気が感じられません。まだ聴き込みが足りないのかもしれませんが。残響音の少ない音質も拍車をかけます。東側のプロパガンダ映画のバックとかで普通に流れてそうな感じ。
勝手な想像ですが、あえていつもと全く違う作風にすることで体制や独裁者の異常性を強調しようとしたのではないかと。演奏には生々しさがあって、会場も異様な熱気。さすがは旧ソ連時代のお国もの、そしてスヴェトラーノフ。別の演奏を聴いたらどう感じるのか、ちょっと気になるところではあります。
ちなみにこのオラトリオ、後の1962年に歌詞が差し替えられています。理由はスターリン批判による当局の都合から。いやまったく受難な作品です。
■演奏・録音
指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏:ソビエト国立交響楽団
A.ヴェデルニコフ(バス)、A.マスレニコフ(テノール)
ソビエト・ゴステレラディオ・アカデミック合唱団
モスクワ・スヴェシニコフ・コーラス・スクール少年合唱団
録音:1978年 モスクワ音楽院大ホール(ライヴ収録)
posted by stonez | 2006.12.20 07:17
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音楽 - オペラ・声楽