モーツァルト/交響曲 第41番「ジュピター」

今日で250回目の誕生日を迎えたモーツァルト。それにしても250年という長い時を経ても、なお生きつづけるその存在には本当に驚きです。

先日、NHKのTV番組にノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊さんが登場し、「アインシュタインがどんなに偉くても、モーツァルトのように人々に喜びを直接伝えることはできなかった」とおっしゃっていました。ご自身の分野に対する謙遜もあるかもしれませんが、音楽という形を通して直接人々の心を解き放してくれる感性による奇蹟を実感します。

というわけで「モーツァルトイヤー」の節目ともいうべき今日取り出したのは、彼が32歳の時に生み出し、通し番号がついた41の交響曲のラストを飾る傑作、交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」です。その壮麗な輝きとスケール感は、まさしくギリシャ神話に出てくる神のような威厳を放っています。

演奏は カール・ベーム指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団です。ベームというと晩年(1976年)のウィーン・フィルとの録音が知られていますが、1962年のこの録音は溌剌としていて厚みのある好演というのが私の印象です。

まずは第1楽章。これがベームかと一瞬思ってしまう快速なテンポですが、それを適度な重量感をもつオーケストラがしっかりと支え、心地よい音色を聴かせてくれます。まるでオペラ・ブッファのような軽やかなアレグロ・ヴィヴァーチェ。

第2楽章はアンダンテ・カンタービレ。変わって充分にテンポを落とし、あたたかい世界を作り出していきます。穏やかに耳元でささやくような弱音機つきのヴァイオリンからは、この世のものとは思えない天国的な響きが広がります。

第3楽章のメヌエットは心安らぐアンサンブル。でもそれだけではなくトランペットやティンパニも登場して時おり高貴な雰囲気も作り出します。第2楽章が天上界の美しさなら、この楽章は地上界の典雅な美しさです。

そして終楽章はモルト・アレグロ。フーガの形式で、繰り返しやってきてはどんどん興奮を高めていく媚薬のような感覚。壮大な弦楽器の合間に入ってくる管楽器は小鳥のさえずりのような美しさ。そして一気に駆け上がって快感のフィナーレです。ベームの巧みな技が散りばめられたモーツァルトのジュピターでした。

そういえばノーベル賞受賞者の小柴さんは、こうも付け加えました。
「モーツァルトは私に喜びを与えてくれる。それだけじゃいけませんか?」
posted by stonez | 2006.01.27 12:55 | Comment(10) | TrackBack(7) | 音楽 - 交響曲
この記事へのコメント
ベームというとあの来日公演での劇遅な演奏が印象にありますが、若い頃はもちろん意外に晩年でも早い絵演奏をしていることがありますね。76年録音のブル8がありますが、ものすごい快速ぶりでこの僅か二年後にあんなにテンポが落ちるのが驚きです。老化は急に来るのかもしれません。
いよいよ明日はモーツァルトのBDですね。
何をエントリーしようかな?
Posted by リベラ33 at 2006.01.27 15:07
ベームはベルリンフィルとの演奏が最高だと思っています。このジュピターの3楽章の端正極まる演奏を聴くと絶頂期のベームの偉大さがよく分かります。

さて、実はお酒バトンが回ってきたのでよろしければお受けいただきたいのです。ご無理は申しませんのでパスしていただいても結構です。
Posted by よし at 2006.01.27 17:38
リベラ33さん、いつもどうもありがとうございます!
そうですよね、ベームは意外に日本とも縁があるようですね。ところでこれまで私が聴いてきたベーム盤は晩年のものが多いのかもしれません。ご紹介されているブル8を含め、ベームの円熟した軽快な演奏というのも聴いてみたいものです。ところでリベラ33さんのブログを拝見しましたが、BDは今日(27日)であってますよね(^^
Posted by stonez at 2006.01.28 01:37
よしさん、コメント頂きどうもありがとうございました!
おっしゃる通り、第3楽章の充実した演奏は印象に残りますね。とにかく両端楽章の気持ち良さに、2、3楽章の心地よさ。そして傑作を印象的な演奏で楽しめるのは贅沢なことです。

ところでお酒バトンどうもありがとうございました!
この週末、ゆっくり音楽でも聴きながら楽しませて頂きます(^^ゞ
Posted by stonez at 2006.01.28 01:47
そうです!
失礼しました!
もう最近なんだか日付とか曜日が全然わかりません(笑)。昨日は慌ててモーツァルトをエントリーしましたよ(汗)。
Posted by リベラ33 at 2006.01.28 10:07
リベラ33さん、ありがとうございます!
そうですよね(^^
今、リベラ33さんのエントリーされたピアノソナタの15番を楽しんでます。
Posted by stonez at 2006.01.28 13:29
昨日、モーツァルト生誕250年を迎え、音楽界は俄然活気を呈して来たようですね。昨日行きつけのCD売り場へ行きましたが、モーツァルト・モードでした。

先日「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」と題する本を読みましたが、18世紀に大作曲家が集中して現れ、クラシック音楽が集大成した訳が何となく判るような気がしました。ちょうど明治維新に、国を思う人物が続出したのと似ていると思いました。
Posted by アスカパパ at 2006.01.28 18:28
アスカパパさん、コメントとTBどうもありがとうございました!
ご紹介の本と集中的に大作曲家が登場したお話、興味深いですね。これほど昔に作られた音楽が、遠く海を隔てた日本でも好んで聴かれていることは素晴らしいことですね。
今年のような節目の年をいい機会に、モーツァルトの多くの美しい音楽に触れられればと思います。きっと眼の治療にもいいでしょうね。どうもありがとうございます!
Posted by stonez at 2006.01.28 20:01
stonezさん、沢山のコメントを頂戴しまして有り難うございました。
ジュピターはエエですね。爽快で明朗、終楽章のフーガなどまさに天才のワザ。何度聴いても昂奮します。
アバドやクーベリック、ブロムシュテットもエエですし、やっぱりワルターも捨てがたいし・・・・でもベームも良かったし・・・デイヴィスやセルも面白い・・・・あれあれ、ナンボでも聴きたくなりますね^^。
Posted by mozart1889 at 2006.01.28 21:51
mozart1889さん、こちらにまでコメント頂きどうもありがとうございます!
コメントと同時にTBもさせて頂こうとしたのですが、うまくいかず改めてさせて頂きました。それにしましても、この音楽。聴けば聴くほど他の演奏家はどうなっているのか知りたくなってくる不思議な音楽ですね。傑作だけあって、いろいろ選択肢があるのは嬉しいところです。まずはmozart1889さんのエントリーを拝見して興味を持ったクーベリックやブロムシュテットあたりから始めてみたいと思います。ありがとうございます!
Posted by stonez at 2006.01.29 01:10
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