スメタナ/連作交響詩「わが祖国」より「ヴィシェフラト(高い城)」

今日は「プラハの春」音楽祭のオープニングコンサートが行われる日。この日に決まって演奏されるのは今日命日を迎えたチェコ音楽の父、スメタナ作曲の交響詩「わが祖国」です。このチェコでの世界的な音楽祭は1946年の春から行われていて、毎年世界中から多くのファンが訪れるそうです。

そして、この「プラハの春」音楽祭の歴史の中で屈指の出来事として語られるとすれば、それは1990年の今日、スメタナホールにて行われたラファエル・クーベリックと名門チェコ・フィルハーモニー管弦楽団によるオープニングコンサートではないでしょうか。

クーベリックは、この「プラハの春」音楽祭の創立に関わり第1回のオープニングを指揮していますが、1948年に共産化したチェコから亡命。以来西側で活動を続け、チェコの民主化によりようやく祖国への復帰がかなったという背景があります。日本でも当時随分と話題になったようですね。

今日は当時の「わが祖国」のライヴ盤から、1曲目ヴィシェフラトです。吟遊詩人の美しいハープではじまるメインテーマは、昔々のおとぎ話がはじまるような風情。この澄んだ音色の向こう側には、聴衆が固唾を飲んでクーベリックに視線を注いでいる様子、緊張感に包まれた静寂があるように感じられます。

そして曲のタイトルでもある、モルダウ川のほとりにそびえる古城にまつわる過去の輝かしい栄光が気高く語られます。しかしそれも束の間、やがて険しい戦いに飲み込まれていく・・・。これはスメタナが残したかったチェコの歴史そのもののようでもあります。演奏からもこの苦難の道を思わせる渾身の描写が深く心に入ってきます。

再びハープによって追憶のテーマが奏でられ、高らかに管楽器が鳴り響いた時、そこには廃墟と化した城のほかに、その先への希望がにじみ出てくる何かがあります。そして、帰ってきた巨匠とそれを待ち望んだ聴衆たちとの充実した空間へと帰っていきます。
posted by stonez | 2006.05.12 18:46 | Comment(7) | TrackBack(2) | 音楽 - 管弦楽曲
この記事へのコメント
スメタナの「わが祖国」、五月になるとなんとなく聞きたくなってくるのは、何か無意識の刷り込みなんでしょうかね。「プラハの春」音楽祭のラストは第九だったと思いましたが、これは師走まで取っておこう(^_^)/
クーベリックには、ボストン交響楽団を指揮した60年代の古い録音もあるはず。機会があれば、こちらも聞いてみたい気がします。
Posted by narkejp at 2006.05.12 20:42
stonez様 こんにちは
昨晩、5月12日がスメタナ氏の命日でしたから、私もアンチェル氏の演奏を聴き始めたのですが、モルダウの後半から寝込んでしまいました。あぁ〜情けない。stonez様御紹介の演奏は、DVDで楽しんでます。
Posted by みー太 at 2006.05.13 12:24
訂正。クーベリックとボストン響との録音は、1971年だそうです。
Posted by narkejp at 2006.05.13 22:13
narkejpさん、コメントとご丁寧な訂正をありがとうございます!
週末は息子のお宮参りのため、遅くなってしまいすみませんでした(^^ゞ おっしゃる通り、プラハの春の季節を迎えると、スメタナのわが祖国を楽しみたくなるというのはありますね。スメタナがチェコのために作り上げた音楽を、遠く離れた日本でも楽しむことができるというのは素晴らしいことだと思いました。クーベリックの71年の録音、覚えておきますね!今度聴き比べてみたいと思います。
Posted by stonez at 2006.05.15 01:09
みー太さま、コメントどうもありがとうございます!そして遅くなりました(^^ゞ カレル・アンチェルの演奏も素晴らしいですよね。彼の演奏はモルダウ以外は未聴ですが、クーベリックとは違った祖国への思いが感じとれる好演だと思いました。それにしましても、DVDでご覧になったとは羨ましい限りです!
Posted by stonez at 2006.05.15 01:12
ご無沙汰しています。お子様もすくすくと成長されていることとお慶び申し上げます。
『わが祖国』より「ヴィシェフラト(高い城)」ですか。いいですね。チェコ人の誇りが感じられます。
私は、ノイマン指揮/チェコ・フィル盤で聴いています。
Posted by アスカパパ at 2006.05.16 09:04
アスカパパさん、コメントとTBどうもありがとうございます!
おかげさまで、息子も元気で最近は泣き声が賑やか過ぎると言っていました(笑)週末に我が家に戻ってくるので、これからが本番です(^^
この「わが祖国」を買うときに、ノイマンにするかクーベリックにするかで迷ったのですが、やはり地元チェコの演奏で聴くと、よりスメタナの思いが心に響いてくる気がしますね。
Posted by stonez at 2006.05.17 12:24
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