メンデルスゾーン/交響曲 第3番「スコットランド」

ドイツ生まれのメンデルスゾーンは、作曲家では珍しく家庭環境や才能に恵まれていたそうです。当時のヨーロッパの良家の子息は、一人立ちするために外国旅行をして見聞を広めたそうですが、メンデルスゾーンもそうして海外を旅し、それが彼の音楽家としての生涯や作品に影響を与えたようです。

先日とりあげた交響曲第4番「イタリア」は、彼がイタリアを旅したときに生まれたといいますが、今日は、彼がスコットランドを訪ねた時にインスピレーションを受け、その後じっくり12年の歳月をかけて作曲された、交響曲第3番「スコットランド」です。
この曲を聴いてみると、「イタリア」のように暖かくて、すがすがしいという雰囲気はありません。逆に、冒頭から何ともしめやかに演奏されていますし、どこか荒涼とした寂しさのようなものを感じたのでした。

イギリス北部に位置するスコットランドは、悲劇の女王メアリ・ステュアートの地としても知られています。
女王メアリは、生後間もなくスコットランド王として即位し、しかも若くしてフランス国王のもとに嫁ぎ、フランス王妃兼スコットランド女王となりましたが、早々に死別して帰国。その後は宗教を巡る争い、権力闘争に翻弄されながらもスコットランドを治めましたが、遂に反対派に追われてイングランドに逃れ、エリザベス女王に保護を求めました。

しかし、当時のイングランド国王であるエリザベス女王とは血縁関係にあり、イングランドの王位継承者でもあったメアリは、エリザベス女王暗殺陰謀の容疑をかけられて20年近くも幽閉された後、斬首刑とされてしまったのです。

メンデルスゾーンは、この悲劇の女王ゆかりの地をたずねてまわり、女王にまつわる数々の悲劇の舞台となったホリルード宮殿と、廃墟となった修道院を訪れたときに、この交響曲の着想を得たといいます。

この話を知ってから改めてじっくり聴いてみると、この第4番「スコットランド」の持つ物悲しさや荒々しさは、運命にもてあそばれ波乱の生涯を送った、スコットランド女王メアリの生涯そのものという気がしてなりません。
それに、よせてはかえす運命の荒波をイメージするのは、全部の楽章がソナタ形式で書かれていたり、全部の楽章が途切れることなく演奏されているからかもしれません。
でも、悲しい中にも時に美しい表情が垣間見えたり、素朴で明るい異国情緒が感じられたりと、聴けば聴くほど味が増し、惹かれていきます。

メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。私がこれからもこの曲を聴いていく中で、さらにいろいろな表情を見せてくれるんじゃないかな、と思います。そして、そう思わせてくれたメンデルスゾーンと、オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団の演奏を聴いてよかったと思います。
posted by stonez | 2005.05.19 21:50 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - 交響曲
この記事へのコメント
おさかな♪もメンデルスゾーンの「スコットランド」大好きです。
>第4番「スコットランド」の持つ物悲しさや荒々しさは、運命にもてあそばれ波乱の生涯を送った、スコットランド女王メアリの生涯そのものという気がしてなりません。
メンデルスゾーンさんは、きっとメアリさんの生涯のことも知っていたのかも知れませんね。
イタリアもとっても素晴らしい曲ですが、スコットランドの持つ物哀しさにはかなわない気がします・・・♪
・・・って名曲に順番なんて付けれないですがf(^-^*)
>全部の楽章がソナタ形式で書かれていたり、全部の楽章が途切れることなく演奏されているからかもしれません。
なるほど・・・。マーラーの伝記を読んで「ソナタ形式」って何かちょとだけ勉強しました。
>でも、悲しい中にも時に美しい表情が垣間見えたり、素朴で明るい異国情緒が感じられたりと、聴けば聴くほど味が増し、惹かれていきます。
うん、うん・・・♪ これがこの曲の魅力ですよね。。。あー、今宗教改革を聴いているのですが、スコットランド聴きたくなってきました〜。
Posted by おさかな♪ at 2005.09.04 08:53
おさかな♪さん、こんにちは、コメントとTBどうもです!
私もソナタ形式って、よく知らなくて最近調べて覚えたんですよ。で、「なるほど、だからあのメロディがまたここで聴けるのかー」とか(笑)いつも発見の連続です(^^ゞ
ところで、スコットランドは本当に切ないというか、聴くと忘れられない曲ですね。確かに、メンデルスゾーンはメアリ伝説を知っていたようで、スコットランドを訪ねた時に、「あぁ、ここがメアリが華麗に暮らし、彼女の秘書リッツィオが殺されるのを目の当たりにした宮殿だ」と言ったそうです。きっと、そんな歴史を偲びながら作ったからこそ、これだけ気持ちの入った印象的な音楽になったんでしょうね。
宗教改革は今CDをチェック中です、メンデルスゾーン聴くのは楽しみです!
Posted by stonez at 2005.09.04 16:11
stonez様 こんにちは。
 この名曲名演の記事を拝見し、再びクレンペラー氏の熱い思いが湧いて参ります。恥ずかしいのですが、私はまだこのCDを聴いておりません。来年は、年間を通じてクレンペラー氏の演奏に再び、どっぷりはまる予定でおります。TBどうも、ありがとうございました。
Posted by みー太 at 2005.11.27 17:20
みー太さま、コメントどうもありがとうございます!
この演奏を聴いた頃は、クレンペラーさんを初めて聴いたというのに近い状態でした(^^ゞ このあといくつかのCDで聴く機会がありましたが、その時にクレンペラー盤特有の空気感というのでしょうか、そういうものがあるように思いました。みー太さまのクレンペラーでのエントリー、楽しみにしています!
Posted by stonez at 2005.11.27 23:04
stonezさん、TB&コメントありがとうございました。
メンデルスゾーンの「イタリア」と「スコットランド」は、例えが悪いですが将棋でいえば飛車角のように見えます。左右の両輪といったほうがいいですね。
どちらも好きですが、「スコットランド」に稍一日の長のようなものを感じます。「フィンガルの洞窟」など、風景が目に浮かぶようですが、メンデルスゾーンは英国が好きだったような気がしてなりません。そんなところも秀でた要因だったかと思ったりする時があります。
Posted by アスカパパ at 2008.02.08 14:52
アスカパパさん、こちらにも本当に感謝です。ありがとうございます!
なるほど、おっしゃる通り代表的な両輪ですね。原色のように鮮やかで明快な「イタリア」に対して、この「スコットランド」は繊細な水彩画タッチといいますか、聴けば聴くほどに味わいの増すところがいいですね。「フィンガルの洞窟」が聴きたくなりました。イギリスとの深い関係、興味深いですね(^^
Posted by stonez at 2008.02.13 01:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/3754466

この記事へのトラックバック

スコットランド
Excerpt: スコットランドCaledonia(ラテン語)Alba(スコットランド・ゲール語)Scotland(英語)(セント・アンドリュー・クロス|詳細)(Royal Coat of Arms of Scotla..
Weblog: 島国Search
Tracked: 2005-07-01 19:34

お買い物??♪×2
Excerpt: 先週の土曜日に、  ??カラヤンのチャイコフスキーセット  (1番??6番、ピアノ・バイオリンのコンチェルト、序曲、バレエ音楽・・・♪)  ??アバドのメンデルスぞ??んセット  (1番??5番、序..
Weblog: おさかな♪の音楽日記
Tracked: 2005-09-04 08:54

メンデルスゾーン/交響曲第3番「スコットランド」イ短調作品56
Excerpt:  今朝のラジオは表記の曲を放送していた。誰のタクトかは聞き漏らしたが、ベルリン・フィルの演奏だった。有名な曲なので特に書くこともないのであるが、やはり、あの序奏がスタートの告知でもあり、総てを象徴し..
Weblog: アスカ・スタジオ
Tracked: 2008-02-08 14:44