モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より「そよ風によせて・・・」

映画『ショーシャンクの空に』。妻とその愛人殺しという"無実の罪"で終身刑となり、ショーシャンク刑務所に収監されたエリート銀行マンのアンディ(ティム・ロビンス)。しかし彼は希望を捨てず、自由になれる日を信じて毎日を生きていく。そんな彼と、古株の囚人レッド(モーガン・フリーマン)との友情、そしてそれを取り巻く刑務所の人々を描いた作品です。

スティーヴン・キング原作のストーリーといい、描写やキャスティングといい、とにかく私が一番好きな映画なのですが、その中で印象的なのが次のシーンです。

刑務所の図書館の司書を任されたアンディは、囚人達にも教育が必要と、根気強く州議会に手紙を送りつづけたのですが、ついに200ドルの予算を約束するとの返事と中古図書が送られてきます。その中に「フィガロの結婚」のレコードが。こっそり聴き始めて自由な気持ちになった彼は、放送室の鍵をかけ、ボリュームを一杯にし、看守たちの制止も聞かず刑務所全体に曲を響き渡らせるのです。
運動場にいた大勢の薄暗い囚人達が、スピーカーを見上げたまま立ち尽くす中、ゆっくりと降りそそぐ美しいアリア。そして青く澄み切った空。手の止める作業場のレッドたち。

親友の囚人レッドは、この光景をこう振り返っています。

俺はこれが何の歌か知らない
知らない方がいいことだってある
よほど美しい内容の歌なんだろう...心が震えるぐらいの
この豊かな歌声が我々の頭上に優しく響き渡った
美しい鳥が訪れて塀を消すかのようだった
短い間だが皆が自由な気分を味わった


「知らない方がいいことだってある」・・・私もこの映画を最初に見た時には、歌の内容を知りませんでした。でもそのとき美しいと思ったし、自由な気分に包まれたのを憶えています。

あのシーンで流れた曲は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」第3幕の二重唱『そよ風によせて・・・』でした。本当はこの歌は浮気者の伯爵をこらしめるために、主人公フィガロのフィアンセと伯爵夫人が偽の手紙を書く歌なのですが、イタリア語がわからないというのもありますが、そのメロディを今聴いてもそんな人間臭いドラマは微塵も感じさせません。

この映画で使用されている演奏は、カール・ベーム指揮のものです。最初はこのアリア聴きたさの為だけに、クラウディオ・アバド指揮/ベルリンフィルのCDを買ったのですが、テンポが速すぎて雰囲気を楽しめず、結局先程のカール・ベーム指揮/ベルリン・ドイツ・オペラによるCDを見つけ、映画と同じ演奏を楽しみました。歌劇「フィガロの結婚」は、是非一度生で見に行きたいと思っています。本物のフィガロを見たら、私はどういう感想を持つのでしょうか。

とにかく、曲の新たな魅力を発見できた貴重な映画だと思っています。
posted by stonez | 2005.05.20 22:03 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - その他楽曲
この記事へのコメント
「ショーシャンクの空に」いい映画ですよね。
僕もベスト3には入れたい名作だと思っています。
改めて見直したのですが、改めて感動しました。
僕だったら絶対に耐え切れないでしょうから。。。

フィガロが流れる場面のレッドの語りにはジーンときます。「知らなくてもいいこと」という言葉の本当の意味を知ることができます。

CDは持っていないので参考にさせてもらいます。
本物のフィガロを見たら・・・、僕もどんな感想を持つのか・・・。なんだか不思議な感じですね。
Posted by NAKAMA at 2005.05.22 01:19
いつもありがとうございます!
NAKAMAさんにそういって頂けると嬉しいです♪伏線のはり方もいいですし、スッキりしますし、本当にいい映画ですよね。
まあそれにしても、囚人の生活は絶対したくないですよね。それだけに、あの話の展開が生きるのでしょうけど...
それから、フィガロのCDは古い物を中古で手に入れてきたのですが、店頭にはもうないようです。。。ご参考になればと思います。
Posted by stonez at 2005.05.22 23:15
こんばんは。
「ショーシャンクの空・・」はまだきちんと観たことがありません。良い作品を残して置くのも良いかなぁと思って、いつかは必ず観るつもりで借りていないのです。
フィガロ、メロディー思い浮かばないので映画を観るまで楽しみにしています。それまではこの曲も聞かずに取っておこうっと。
Posted by iketomosan at 2005.05.23 01:01
iketomoさん、コメントありがとうございます!ご無沙汰してしまいすみません。
「ショーシャンクの空に・・・」を見た者の意見としては、とにかく、気分的に「よし!見よう」という環境(笑)が整ってから見られたら楽しいと思いますよ。
私も「フィガロの結婚」はいつか必ず見るつもりで、大切に残しています。公演タイミングと予算という重要な問題もありますけどね(笑)
Posted by stonez at 2005.05.23 11:42
stonezさん、こんにちは。「ショーシャンクの空に」へのコメント、及びTBありがとうございます。
stonezさんは、3年ほど前からこの映画を、おりにつけ鑑賞されているとの由、承りました。私はもっと後からDVDを購入して鑑賞した次第です。stonezさんと、同じシーンに対する感銘を共有出来て嬉しいです。
この映画に登場する「フィガロの結婚より・・」の演奏は、カール・ベームの指揮によるものでしたか。ほんとうに佳かったですね。カール・ベーム指揮/ウィーン・フィル演奏による盤も少し持っていますが、ベームの音楽は、ゆったりとして風格滲む音楽との印象を持ちます。名指揮者の一人ですね。
Posted by アスカパパ at 2008.06.17 16:05
アスカパパさん、遅くなりましてすみません、こちらにもコメント&TBをありがとうございました。
私も学生時代に友人に勧められたのですが、なかなか見る機会がなかったのでもっと早くに見てもよかったな、なんてよく思います(笑)きっと他にもそういう映画はたくさんあるでしょうね。アスカパパさんのエントリーを拝見していると「見てみたいな」とよく思いますので。。
ベームの演奏、特に彼のモーツァルトは比較的いろいろあさってみてますが、きっかけになったのはやはりこの映画ですね。他では聴けない悠然とした風格がありますよね。
Posted by stonez at 2008.06.21 01:25
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