ドヴォルザーク/交響曲 第8番

このところ仕事が忙しくなってきました。そんなときの帰り道には、気分転換にどこか別の世界へ連れて行ってくれるような音楽を聴きたくなるものです。今日はそんな一曲です。

プラハ近郊ののどかな村。北には森が広がり、南には池のある谷間へと視界が開けています。そして、その池の向こうには教会のある丘が見えます・・・

これがチェコの代表的な作曲家ドヴォルザークが移り住んで、交響曲第8番をスケッチした場所の風景だそうです。そして、彼は義兄に「鳥の交響曲を作るつもりだ」と伝えたそうです。たとえ、そんなことを知っていようがいまいが、この音楽に触れてしまえば、そして、窮屈な通勤電車の中でも目さえ閉じてしまえば(笑)、そこには想像したボヘミアの風景が広がってくるから不思議。

第1楽章は、ボヘミアの物憂い夜明けから、小鳥のさえずりとともに明るさと活気に満ちた朝になる情景にぐっと掴まれ、第2楽章では広大な自然をいっぱいに感じますが、奥底に流れる悲しみは歴史の運命から来ているのでしょうか。でもそれを乗り越えた達成感は天に突き抜けるほどです。第3楽章は、一度聴いたら忘れられない物憂げなスラブ舞曲風ワルツ。伸びやかで素朴な美しさです。そして第4楽章は、鮮烈なトランペットとともに再び田園風景へ。明るさと熱気につつまれた変奏曲です。副主題はコガネムシのテーマ!興奮のうちに幕を閉じます。

ドヴォルザークはよく屈指のメロディメーカーといわれますが、まったくその通りだと思います。この第8交響曲は、穏やかで、素朴なチェコらしい印象を受けます。

そしてなによりもこの曲に豊かな響きと、奥行きをもった作品に仕上げているのは、ジョージ・セル指揮/クリーヴランド管弦楽団による演奏だからでしょう。この録音はセルの亡くなる3ヶ月前、1970年の生涯最後のレコーディングのものですが、そんな最晩年にあっても、彼が長年磨き上げたオーケストラの音色の美しさはもちろん、全体が一つの楽器のように響いてくるのは驚きです。

聴き終わって再び電車風景に戻ったときの充実感が、それを証明してくれます。

Tags:セル 
posted by stonez | 2005.09.02 22:51 | Comment(20) | TrackBack(9) | 音楽 - 交響曲
この記事へのコメント
やられた!先を越されちゃった!セルのドヴォ8、いつか書こうと思ってたのに!(笑)
・・・・というのは冗談として、TBどうも有り難うございました。
セルのCDで、最も好きなのがこの演奏です。最晩年の1枚、オケも指揮も熱いし巧い。もう文句なしの大定番だとおもいます。
この時期にセルがEMIに録音したこの演奏、シューベルトのグレート、ギレリスとのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集、どれも素晴らしい出来だと思うんです。大好きです。
第3楽章以降は、全くドヴォルザークの個性が炸裂した、本当に美しい交響曲だと思います。
Posted by mozart1889 at 2005.09.03 05:10
こんにちは。セルのドヴォルザーク、私も好んで聞いています。リズムが正確無比で、なおかつ音楽にふっくらとした香りがあるのが特徴だと思います。セルの演奏が好きな方がここにも!と嬉しく思います。
Posted by narkejp at 2005.09.03 05:36
セルはもうスタンダードの1枚ですね。でも私はクーベリックのライヴ録音も聴いて欲しいなぁ。コガネムシなんてもう鳴門の渦潮のように雄大に白熱しています。テンポがすごい早い。
ところで、セルはかつて冷たい演奏家の筆頭のように言われていましたが、全然そうは聴こえまいと思うのですが如何でしょう?。詩情をたたえた透明な清潔感が私には快く聴こえますし、その中のヒューマンな部分は結構心洗われると思うのですが。
Posted by yurikamome122 at 2005.09.03 13:20
mozart1889さん、コメントとTBありがとうございました!
この曲はまだ、セル/クリーヴランド管でしか聴いていませんが、こんなにいい曲だとは知りませんでした(^^ゞ ジュリーニは今度「展覧会の絵」を是非聴きたいと思っていたのですが、ドヴォルザーク第8番の方が上位にランクインしました(笑)
ところで、セルの遺したCDは結構あるようなので、これから少しずつ楽しみたいと思っています。mozart1889さんのブログも参考にさせて頂きますね!
Posted by stonez at 2005.09.03 19:55
narkejpさん、はじめまして!どうもありがとうございます。
おっしゃる「ふっくらした香り」、納得です。録音にしても決して新しいものではないのに、あれほど空気感まで伝わってくることに驚きを感じます。セルの演奏をじっくり聴くのは、実はこれが初めてなのですが、別の演奏にも興味が湧くような録音でした。
私も、narkejpさんのブログへ遊びに行かせて頂きますね。今後ともよろしくお願い致します。
Posted by stonez at 2005.09.03 20:01
yurikamome122さん、コメント&TBありがとうございました!
クーベリック、しかもライヴ録音というところに惹かれます(^^ゞ 最近、クーベリック/VPOのマーラー「巨人」を聴いていますが、モノラル録音なのに何故か惹かれるものがあります。雄大なコガネムシ(笑)聴きたいですね、さっそくチェックしてみます。
セルが冷たい演奏家というのは興味深いですが、今回のドヴォルザークの第8番を聴いてみると、暖かさを感じますね。他の曲の演奏も聴きたくさせる魅力があると感じました。
Posted by stonez at 2005.09.03 20:14
 ブログ「随時休息。常時セル。」を書いている者です。このたびはコメントとトラックバックをありがとうございました。

 佳人のごとき第三楽章・・・しかし、それにしても第4楽章中には確かに「コガネムシのテーマ!」も・・・そうなんですね、「金持ちだ〜」のあれなんですねえ・・・ちょっと面白おかしいんですが、しかし、あれが無いと寂しいですねえ・・・音楽のどこに魅力を覚えるかは人それぞれですが、そう言えば第4楽章終盤、8分半あまり経過して以降のティンパニのリズムや強弱がとても好きで、友人のドラムに触れる機会があると1人あのティンパニをなぞって叩いていました・・・。

 なお、勝手ながら貴ブログへのリンクを設定させていただきました。さしつかえありましたらお知らせ下さい。

 今後ともよろしくお願いいたします。


Posted by クラシカルな某 at 2005.09.03 21:32
stonezさん
こんばんは♪
TBをありがとうございます☆☆☆
ドヴォルザークって自然が大好きだったみたいですね♪ アメリカに渡ってからもチェコの自然を懐かしがっているし・・・。
関係ないですが、伝記の写真を見るととっても感じの良い奥さん&お子さんが沢山いて、ちょっと嬉しくなりました。
私が持っているCDはジュリーニさんの演奏ですが、stonezさんの記事を読んでいろいろな演奏があるんだなぁと思いました♪
お仕事がお忙しいとのこと、くれぐれもお体に気をつけてくださいね。
Posted by おさかな♪ at 2005.09.03 23:01
クラシカルな某さん、どうもありがとうございます!
ドヴォルザークは、印象的な旋律を随所に配置していて、そういうところも魅力の一つとして面白いなと思いました。「コガネムシ」もいい味ですね。盛り上がりに花を添えています。ティンパニの部分、さっそく聴いてみましたが、魅力的な強弱ですね。押すだけでない盛り上げ方、興奮の誘い方があるんですね。聴けば聴くほど味が出てきました(^^ゞ
ところで、リンクを設定して頂きありがとうございます!こちらこそ、リンクさせて頂きたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
Posted by stonez at 2005.09.04 01:29
おさかな♪さん、いつもありがとうございます!
ドヴォルザークがチェコと自然を愛しているというエピソードからして素敵ですよね。今まであまり深く考えたことは無かったんですけど、実は第9番の「新世界より」の「より」は祖国チェコの人たちへの音楽の便りの意味だった、というのを知って感動していました・・・
音楽家さんにも、いろいろな夫婦・家族の形があるようですけど、家族円満が音楽に与える影響とかも無視できない気がしますね。そんなことを考えながら、彼の作曲した他の曲も聴いてみたいと思います!おさかな♪さんもお忙しそうですが、まあ無理せずいきましょう(^^ゞ
Posted by stonez at 2005.09.04 01:48
これ名盤ですよねー。僕もいつか投稿しようと思っていてつい、後手後手になってしまっています。
セルのことを即物的なんて言ったのは誰なんでしょう?70年東京ライヴやVPOとの運命、このドボ八を聴いて即物的なんていう言葉が出てくるのでしょうか?僕はこのセル評に悪影響を受けて正直セル・デビューが遅れたのです(涙)。
Posted by リベラ33 at 2005.09.04 16:08
こんにちは。
セルのドボ8、素晴らしい名演ですよね。スタイリッシュな音楽の作り方はいつものセルですが、ドボルザークやヤナーチェクといった音楽を演奏するときのセルは夢というか郷愁の念が感じられます。エントリーされているCDは最晩年の演奏だと思いますが、実はCBSの旧盤もなかなか捨てがたい名演奏だと思っています。
Posted by romani at 2005.09.04 16:14
リベラ33さん、どうもありがとうございます!
ついに、聴いてみました(^^ゞ 私は初めてのセルですが、このCDにして良かったと思ってます。同じ曲でも、演奏の違いで聴きたいと思う場面が違うことがよくありますが、このセルの演奏は疲れた体に優しい暖かさのようなものがあります。
VPOとの運命是非聴いてみたいですね。耳にすることができるセルの演奏を今度チェックしてみたいと思います。
Posted by stonez at 2005.09.04 21:47
romaniさん、どうもありがとうございます!
ドヴォルザークにヤナーチェク、ということはチェコの曲ですね。私が感じた奥底にある悲しさ、それを打ち消すような暖かさからは確かに祖国への思いに重なるものがあるように感じられますね。お話しのCBS盤、是非聴いてみたいですね。とにかく今度はどの演奏をセルで楽しもうか、楽しみになってきました(^^ゞ
Posted by stonez at 2005.09.04 21:57
こんにちは。ETUDEさんのブログから参りました。
セルのこの8番、シューベルト「グレイト」と並び遺言的名演ですね(CBS専属を離れ、EMI録音ということもある)。
セル&クリーブランドとジュリーニ&CSO、アメリカオケながら好対照です。シャープで劇的なセル、柔らかなレガート(金管までも弦のようにしてしまう)ジュリーニ。この曲でこれほどカラーを異ならせるのも珍しいのでは。
Posted by orooro at 2005.09.08 14:25
orooroさん、はじめまして。どうもありがとうございます!
シューベルトのグレイトも今度聴いてみたいですね。それだけドヴォルザークの演奏が好印象でした。ジュリーニの演奏は晩年(?)のスカラ座フィルの演奏しかまだ聴いていませんが、やわらかい演奏、本当にその通りだと思いました。
カラーの違う演奏を感じながら聴くというのも贅沢な楽しみ方ですね。
Posted by stonez at 2005.09.09 18:17
お邪魔します。セルのドヴォルザーク、TBさせていただきます。よろしくお願いします。
実は、この演奏、2枚持っております。その昔、ダブり買いをしてしまっております(^^ゞ。
友人に1枚やることにしました。今回はそのジャケットであります・・・・・・・・。
Posted by mozart1889 at 2005.10.07 10:44
mozart1889さん、コメントとTB頂きありがとうございました。
さっそく拝見しましたが、セルの満足げな表情が何ともいえませんね。このドヴォ8の暖かい演奏を聴いていると、こちらのジャケットの方が良く思えてきます。CDのジャケット写真は、デザインなどがよく変わってしまいますよね。そこが残念でもあり、楽しみでもあるのですが(^^ゞ
Posted by stonez at 2005.10.07 13:11
こんばんは。
なんか今さらなTBかもしれませんが、当方でもこの曲を取り上げました。
セルは聴いたことないですが、皆さんが取り上げてるのをみると興味が湧きます(どんな曲でもそうですが)。
Posted by 朱 厚照 at 2006.02.01 22:29
朱 厚照さん、コメントありがとうございました!
いえいえ、コメントやTBを頂いて、また音楽の新たな一面を知ることができるので感謝しています。私はセルという指揮者の録音はまだまだ聴きはじめたばかりですが、繰り返し聴いても飽きないような深さ、暖かみがあるような気がしています。
Posted by stonez at 2006.02.02 00:25
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