ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第24番「テレーゼ」

♫ベートーヴェンの最後のピアノ曲が発見されたかも、だそうですね。こういう話わくわくします。はやく聴いてみたいものです。とはいえ既に発表されていながら未聴という作品だって、私の場合ベートーヴェンに限らずゴマンとあるわけで、そちらも気長に楽しんでいく方向で。

今日はベートーヴェン作曲、ピアノ・ソナタ第24番 嬰ヘ長調 Op.78「テレーゼ」を聴きました。ピアノはクラウディオ・アラウ。60年代の録音です。

優しさと慈しみに満ちていて、幸せな音楽だなあと思いながらも、時おり見せる不安な旋律がかなわぬ恋の行く末をもう見据えているかのようで、なんともセンチメンタル。。またその時にアラウがみせる力強いタッチが、そのままベートーヴェンがもじゃもじゃ頭をかきむしりながら気持ちを高ぶらせているかのようで圧倒されました。

かの有名な「エリーゼのために」のテレーゼと、この作品を贈られたテレーゼはどうやら別の女性だったらしいですし、また「失恋する度に名曲を作る」なんて言われるほどベートーヴェンは惚れっぽい人だったようですが、やはり芸術家として得難いキャラクターだったんだなと思うわけであります。

posted by stonez | 2008.09.11 23:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

サティ/「メデューサの罠」のための7つの小舞曲

あっかんべーついに、と言うべきか、詐欺に遭ってしまいました。発端は「換気扇のお掃除します」という電話があって、実際その汚れを気にしていた妻が応じてしまったというものですが。。案の定、その掃除というのは『罠』で、私が仕事で留守にしている時間にやってきて、掃除の仕上がり具合に感動させつつ健康をキーワードに言葉巧みに誘導し、なんと40万円もする洗剤生成機を買わせて設置していきやがったのですorz。サイフの紐が固いはずの妻を見事に騙し・・・いやほんとに呆れた手口でした。

幸いにして、市の消費者センターとクーリングオフ制度に助けてもらい事なきを得ましたが、もうこりごり。自戒するいい機会になったこと、妻の本厄払いができたこと(?)、ついでに換気扇がピカピカになったことが今回の収穫です。この写真をあの悪徳業者様に捧げます。皆さまもどうかご用心を。

今回の選曲はネタです(笑)。目には目を、罠には罠をということで『罠』つながりで、サティ作曲、「メデューサの」のための7つの小舞曲です。ピアノは、サティ弾きとしても名高い名匠アルド・チッコリーニです。60年代の録音にて。

7曲もある、と思いながら聴き始めたのもつかの間、わずか3分で全曲終了してしまいました。これが罠ですか(笑)というのはさておき、この曲集はサティ自身が作った「メデューサの罠」という抒情喜劇に出てくる、7つの舞曲のピアノ版ということです。この喜劇のことは分かりませんが、サティらしくシニカルで飄々とした曲調、ぶっきらぼうな曲の結び方です。さらりと粋に弾きこなすチッコリーニの演奏がまたカッコいいんです。

posted by stonez | 2008.09.04 23:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

ラヴェル/ソナチネ

昨年、網膜剥離の手術をしてくださった大学病院の先生が独立、開業することになり、私もそちらに通院してきました。いよいよ人生最初のメガネをつくることになりそうです。写真は最寄りのJR横浜線・十日市場駅。シンプルでほのぼのした駅舎です。

今日はラヴェル作曲のピアノ曲、ソナチネ。その名前が示すとおりの小さな小さなソナタ。でもその表情は色彩と透明感がひろがる大人な世界。ピアノはマルタ・アルゲリッチです。

1曲目は小雨が降りしきる中を、うつむき加減に歩いていくような気分になる音楽。音の中に涼があります。次のメヌエットは静かな夜に聴きたい、繊細で美しい1曲。そこを流れる空気を浄化してくれそうな心地よさです。最後の曲は本降りになった雨のよう。雨粒が生き生きと躍動しているように聞こえてきます。

メヌエットでのしっとり落ち着いた中に見せる憂鬱、そして、ほとばしる情熱の一端が垣間見える第3楽章。この小さな小さな作品の中にも、アルゲリッチの魅力はしっかりと感じ取れます。

さてさて、このあと深夜2時から始まるAppleのイベントで新型iPodが発表されるらしいです。楽しみに待ちたいと思います(^^
posted by stonez | 2007.09.05 23:59 | Comment(0) | TrackBack(2) | 音楽 - 器楽曲

ドビュッシー/レントより遅く

はからずも9連休となったGWなんですが、週間予報によると今日は貴重な良い天気、ということで千葉のマザー牧場に行ってきました。

川崎だから東京湾アクアラインを使えばわけないだろうという発想でしたが、いやぁ甘かった(笑)。道に迷ったのと大渋滞が災いし3時間半かかりました。実家より遠く感じました。写真は帰りの海ほたるPAにて。やっぱり海は大きかった!。マウスオンはそのマザー牧場にて。大混雑でした。

今日はドビュッシー作曲、レントより遅く。サンソン・フランソワのピアノです。

おなじみフランソワのちょっと気だるく気まぐれなピアノですが、それがこの音楽にはぴったりです。

レントより遅くなんだけど、やけに速くなったり。それは今日の私たちの、楽しかったり美味しかったりしたときの高揚感なんだろうな。渋滞にどっぷり浸かった時はぐったりしつつ、まったりと。

全体的には約7時間を車の中で過ごした気分そのものということで。
posted by stonez | 2007.04.29 23:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

グリーグ/ピアノ・ソナタ

もう見納めの夜桜です。桜が咲くと、その後は決まって雨ばかりのような気がします。「決まって雨」といえば小学校の運動会を思い出しますが、あれは何かの試練だったのでしょうか。それはさておき息子が歩きました。親にとっては忘れられない8歩でした(マウスオン)。

今日はグリーグ作曲、ピアノ・ソナタ ホ短調 Op.7。ピアノは北欧フィンランドと日本で活躍するピアニスト、舘野泉さん。

グリーグのピアノといったらまずはコンチェルトですが、私の好みはこちらのソナタです。ショパンを思わせる情感とドビュッシーのような色彩を持った、北欧らしい透明な音楽です。あまり多くを語りすぎず、それでいて詩的というところは日本人の感覚にも合っている気がします。舘野さんのピアノにはそういう「間」というか空気感が感じられます。

第1楽章のしんしんと雪が降るような響きとか、第2楽章の水が流れてくような色彩感なんて好きですね。体に染み込んでくような優しさです。このあとは穏やかなトリオを持ったメロディアスなメヌエット、厳しい気候を思わせる疾風のフィナーレへと続きます。

個人的にはラヴェルあたりのオーケストレーションでも聴いてみたい気がしましたが、やっぱりピアノだからいいんでしょうね。グリーグは器楽や室内楽といった小規模なジャンルにも魅力的な作品を多く残しているようです。
posted by stonez | 2007.04.10 00:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

武満徹/雨の樹:素描

昨日の昼メシに好物マーボー麺を食べに行ったお店で、杉山清貴の『最後のHoly Night』が流れてました。もうそんな時期なんですね。いやでも古いなぁと思いつつ、なんか妙な新鮮味を感じました。歌も歌声も好きなんですが、今や「懐メロ」ですね。カラオケの1曲目にはちょっと出しにくいなぁ。

さて、今年は没後10年を迎えたタケミツ・イヤーでもあります。でも、以前何の準備もなく現代の音楽へ入って道に迷いましたので(笑)、まずはちょっとしたピアノ作品から再入場してみることにしました。

武満徹が1982年に作曲したピアノ独奏曲、「雨の樹:素描」。ピアノはピーター・セルキン。iTunes Storeにて150円。杉山清貴と同じ1980年代でも、かたや現代音楽、そしてもう一方は懐メロ。音楽って面白いです。深いです。

「雨の樹:素描」はタイトル通り、木からおちてゆく水滴をスケッチしたというだけあって、印象派の流れを感じます。不揃いでまばら。水墨画みたいなモノトーンな音色。でもセルキンのピアノには突き刺すような寒さがなくて、それがちょっとホッとする。

水を描写したピアノ曲といえば、ラヴェルの「水の戯れ」とか、ドビュッシーの「水の反映」といったあたりが思い浮かびます。何気ない自然の一コマが、作曲家のフィルターを通したとき、頭の中で一枚の個性的な絵画みたいに鮮やかに再現される。やっぱり音楽って面白いです。深いです。
posted by stonez | 2006.12.09 01:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」

最近ジュニアは、夜泣きほどでもないですが夜中は2時間おきに目覚めるようになりました。まだ授乳中なので妻は大変です。私も何か協力できればと思うのですが、どういうわけか目が覚めません。B型だからでしょうか(笑)

このところはクラウディオ・アラウのベートーヴェンを聴いています。7大ピアノ・ソナタとして、主要どころを押さえたおいしいCDです。その中のお気に入りは、ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタイン」です。

ベートーヴェンが苦悩から立ち直って、中期「傑作の森」を迎えた頃に完成されたこの作品は、当時最新鋭のピアノを贈られたことも手伝って、音域と技巧を追求した作品となっています。愛称は、ベートーヴェンにとって良き理解者であり援助者だったワルトシュタイン伯爵への献呈に由来するとか。

第1楽章、ズンズンという低音の連打、そこから高音へと登っていったあとの晴れ晴れした音色。アラウは遅めの一定したテンポを保って豊かに聴かせます。ベートーヴェンが、聴きようによってはJazzっぽくお洒落にすら感じられます。

第2楽章は深い瞑想の中へ。ゆっくりと、やがて心落ち着いて目を開けた時、自然と第3楽章に入り暖かな光が注ぎ込む。アラウはここでも勢いに走らず、悟ったような穏やかさをたたえています。それは徐々にまばゆさを増していき完成へと向かっていく。

アラウのピアノには独特の味があります。一見不器用で実直ですが、そこには何ともいえない温もりと、わくわく感があります。他にもっと変化に富んだ精密な演奏はあると思いますが、私はこの軽妙洒脱な味わいが好きです。
posted by stonez | 2006.11.24 02:03 | Comment(8) | TrackBack(1) | 音楽 - 器楽曲

サティ/気むずかしい気取り屋の3つの高雅なワルツ

ようやく梅雨明けして短い夏の到来。でもまだ過ごしやすいので夏という実感はまだまだです。写真は近所の駅から。リベラ33さんのブログで、この変わった駅名が話題に出ていました。読みがプラーザで英語表記はPLAZA。引越してきた頃はそれも気になったりしたものです。

さて変わった名前といえば、思いつくのはエリック・サティのピアノ曲。その中から「気むずかしい気取り屋の3つの高雅なワルツ」。日本語訳の関係からか、微妙に言いまわしの違うタイトルが存在しますが、こちらが語呂がよかったので。ピアノは高橋悠治さん。

この「気むずかしい気取り屋」というのは、サティ自身なのかなと思ったりします。曲からもタイトルからもそのオーラが存分に放たれていて、本で見たサティの気難しそうな風体や変わった生き様にぴったり。それにしても3曲足しても3分に満たないのですから、そのインパクトたるや凄まじいものがあります。

最初は「容姿」。さも不恰好。例え外見がピシッとしていても仕草や思考はコミカルそのもの。でも次の「メガネ」は180度逆。たくさんの出会いや別れ、喜びや悲しみを見つめてきて今静かにテーブルの上にたたずむメガネ。シンプルなのにノスタルジック。サティで一番好きなフレーズです。ずっと聴きたいけど、すぐ終わってしまうところが良いのかも。最後の「脚」はまた元気な路線に戻るので、この対照的なコントラストが妙。おフランスらしい魅力です。

高橋さんはアントルモンとは違って、流れるように感情豊かな演奏ではなくて、丁寧で誠実な演奏で、どちらかというと聴いている方の想像を膨らませます。日本人の耳によく合った演奏かもしれませんね。
posted by stonez | 2006.08.02 23:11 | Comment(4) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

J.S.バッハ/2声のインヴェンション

息子が生後100日を迎え、昨日は『お食い初め』の儀式を親子3人、静かに行いました。とはいっても、本人は食べる「マネっこ」をするだけで実際には親が食べて、後日母乳を通してお腹に届くことになります。親は、魚の鱗やワタを取るのは大変だ、というのを身をもって学ぶことができました。親共々食事に困りませんように。

さて、海の日を過ぎても一向に降り止まない雨。J.S.バッハ作曲、2声のインヴェンション BWV 772a-786 を聴いています。アンドラーシュ・シフの弾くピアノ版。

各調の長短調からなる15曲のこの曲集は、高音と低音の二つの旋律がそれぞれ一方を追いかけたり、並んだり、逆に追われたりと、自在に絡まりあいながら美しい泉のように湧き出してきて、それが耳を通して体に染み渡ります。

バッハ弾きの名手といわれるシフは、1曲1曲がシンプルできっちり構築された感じのこの音楽を美しく、そして余韻の部分まで豊かに描き出しているように感じます。特に気持ち控えめな低音が、高音を追いかけていく時ににじみ出る、深い落ち着きと優しさは、それはそれは心安らかな空間といえます。

この音楽は、装飾音が演奏者の裁量に任されているとのことなので、きっと演奏者によって異なった味が楽しめそうです。チェンバロで聴くのもまた面白いでしょう。そうなるとこれはバッハが残した、楽想(インヴェンション)を膨らます格好のカンバスと言えるかもしれません。シンプルでいて奥深い音楽です。

Tags:シフ 
posted by stonez | 2006.07.24 22:24 | Comment(4) | TrackBack(0) | 音楽 - 器楽曲

ラヴェル/マ・メール・ロワ

本格的に梅雨の季節到来。外では絶えず雨音がしている中、家では新米オヤジが息子を寝かせていますが、これが全然ダメで(笑)。抱っこして寝かせてもベットに移すところで起床!そしてまた抱っこして・・・1時間くらい繰り返したところで親も寝る時間になりました、おやすみなさい。

日曜日。またも暗くて外は雨。そんな日は、ラヴェル作曲の「マ・メール・ロワ」を。パスカル・ロジェとデニス・フランソワ・ロジェのピアノ連弾です。

マ・メール・ロワ、英語ではマザー・グース。音楽から伝わってくるこの童話は、底抜けに明るいおとぎ話ではなく、どこか神秘的で幻想的。ロジェたちの演奏は、連弾というのを忘れるほど息がぴたりと合っていて、しかも絵本のようにお話の風景が浮かびあがります。

「眠りの森の美女のパヴァーヌ」 呪いをかけられて眠ったままの王女のまわりを、宮廷に使える者たちがゆったりと舞っている様子。おだやかな子守歌。

「親指小僧」 貧しさゆえに森に捨てられてしまった親指小僧は、道標にとパンの屑をまいておくのだけど、小鳥たちに食べられてしまったというお話。ぐるぐる途方に暮れてしまう様子。気がつくと小鳥たちの鳴き声が。

「パゴダの女王レドロネット」 中国製の陶器の人形の女王が入浴を始めると、人形たちが木の実でできた小さな楽器を奏でる。中国の情緒たっぷりの軽快な音楽。

「美女と野獣の対話」 呪いで野獣に変えられてしまった王子と姫との対話。低音の野獣、そして高音で奏でられる姫とのコントラスト、甘くてちょっと切ないメロディ。愛が実った時、呪いは解けて美しい王子が現れる。

「妖精の国」 眠りの森の美女が王子のくちづけによって目覚めるところ。ラストに相応しく、暖かな輝きとともに祝福されて結ばれる。本当にラヴェルはピアノ一つでいろんな風景を作り出すなぁと感動。そしてロジェたちのピアノが繊細に彩ります。
posted by stonez | 2006.06.18 17:21 | Comment(4) | TrackBack(1) | 音楽 - 器楽曲