私が興味を抱いたときには既にこのコンサートは終わっていましたし、残された時間も少なかったので私は一度も見ることができませんでした、動くカラヤン。もう届いたその日のうちに目を皿のようにして即鑑賞!さすが全てをプロデュースしてきたカラヤン、身振り手振りから風貌に至るまで実にダンディ。
その上、カラヤン自身が過剰に愛想を振りまかないスタイルや(体調?)、自身が直接こだわったという乗馬やバレエの映像、そして何よりもとろけるほどロマンティックで上品なワルツやポルカをウィーン・フィルから引き出している様子が、このコンサートの近年の映像しか知らない私には新鮮に映ります。
だからこそ「雷鳴と電光」の最後でおどけながら撃たれる仕草をしたりとか、「常動曲」が繰り返しに入ったところで、鼻をつまんでから『あー、もうたくさん』と捨て鉢に手を払いのけたりするような、数少ない演出が効果的に生きてくるのですね。むむ、さすが。
とにかくうっとりするような「天体の音楽」や「皇帝円舞曲」など言うに及ばず、「ジプシー男爵」ですら官能的に聴こえます。「こうもり」だって流れるような美しさ。終わった後の『どうだね』という得意げな表情は、同じこの曲をテンポを自在に揺らしながら、精悍な響きを追求していたオザワの迫力とはまるで対照的なのでした。
それから、なんといっても良かったのがキャスリーン・バトルが登場して歌い上げた「春の声」。ただただ鮮やかなコロラトゥーラ・ソプラノに聴き入るばかり。しかも圧倒的なのに重たくない。まさに素敵というほかありません。何度も彼女を優しく見つめるカラヤンを見ていると、こちらまで微笑んでしまいます。
最後はカラヤンが音をつまみ上げるようにして始まるきらびやかな「美しく青きドナウ」に「ラデツキー行進曲」と贅沢三昧のフルコース、美味しく頂きました。一時代を象徴する映像、見た甲斐ありました(^^
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