ニューイヤー・コンサート1987

早くしないと店頭から消えてしまうかもと焦りを感じていた折、先日のyurikamomeさんのエントリーを拝見して即購入。カラヤンが最初で最後にウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに登場した、1987年のライヴDVD。

私が興味を抱いたときには既にこのコンサートは終わっていましたし、残された時間も少なかったので私は一度も見ることができませんでした、動くカラヤン。もう届いたその日のうちに目を皿のようにして即鑑賞!さすが全てをプロデュースしてきたカラヤン、身振り手振りから風貌に至るまで実にダンディ。

その上、カラヤン自身が過剰に愛想を振りまかないスタイルや(体調?)、自身が直接こだわったという乗馬やバレエの映像、そして何よりもとろけるほどロマンティックで上品なワルツやポルカをウィーン・フィルから引き出している様子が、このコンサートの近年の映像しか知らない私には新鮮に映ります。

だからこそ「雷鳴と電光」の最後でおどけながら撃たれる仕草をしたりとか、「常動曲」が繰り返しに入ったところで、鼻をつまんでから『あー、もうたくさん』と捨て鉢に手を払いのけたりするような、数少ない演出が効果的に生きてくるのですね。むむ、さすが。

とにかくうっとりするような「天体の音楽」や「皇帝円舞曲」など言うに及ばず、「ジプシー男爵」ですら官能的に聴こえます。「こうもり」だって流れるような美しさ。終わった後の『どうだね』という得意げな表情は、同じこの曲をテンポを自在に揺らしながら、精悍な響きを追求していたオザワの迫力とはまるで対照的なのでした。

それから、なんといっても良かったのがキャスリーン・バトルが登場して歌い上げた「春の声」。ただただ鮮やかなコロラトゥーラ・ソプラノに聴き入るばかり。しかも圧倒的なのに重たくない。まさに素敵というほかありません。何度も彼女を優しく見つめるカラヤンを見ていると、こちらまで微笑んでしまいます。

最後はカラヤンが音をつまみ上げるようにして始まるきらびやかな「美しく青きドナウ」に「ラデツキー行進曲」と贅沢三昧のフルコース、美味しく頂きました。一時代を象徴する映像、見た甲斐ありました(^^
posted by stonez | 2006.06.28 00:36 | Comment(8) | TrackBack(2) | 音楽 - その他楽曲

ヘンデル/見よ勇者は帰る

夏休みがとれたので、故郷の群馬に来ています。日付は変わりましたが、昨日の甲子園・高校野球大会は私の地元・群馬の前橋商と、いつもお世話になっているyurikamome122さんの母校・東京の日大三との試合でした。前商は私の母校ではありませんが、私が大学入試センター試験を受験した時の会場として思い出深い高校です。

接戦に次ぐ接戦。最終回は手に汗握る二死満塁逆転のチャンス。結果は惜しくも9対6で敗戦となりましたが、強豪相手に興奮の試合を展開してくれました。とにかく両校の選手たちの素晴らしいプレーに拍手です。勝利した日大三高には、前商の分まで勝ち進んでいって欲しいものです。

余談ですが、この前橋商は野球マンガの「タッチ」に出てくる明星学園のモデルとなった高校です。というのも作者のあだち充さんの母校なんですね。2005年の「タッチ」の映画化の年に、前商が19年ぶりに甲子園出場という偶然が重なりました。

今日は高校球児たちの健闘に敬意を表し、ヘンデル作曲「見よ勇者は帰る」を、ユージン・オーマンディ指揮/フィラデルフィア管弦楽団の演奏で。3、4分程度の、とても短い曲ですがタイトルよりも曲の方が有名です。よく、表彰式などの時にお馴染みのあのメロディです。ラヴェルのボレロではありませんが、シンプルな旋律が楽器や強弱が変わりながら繰り返され、勇者の功績をたたえていきます。そして、クライマックスは「本当によくやった!その健闘をたたえ、ここに表彰します」というねぎらいの声が聞こえてきます。貫録のある堂々たる演奏です。

でも暑い暑い甲子園の夏は、まだまだ続きます!
posted by stonez | 2005.08.16 00:14 | Comment(8) | TrackBack(0) | 音楽 - その他楽曲

ポンキエッリ/歌劇「ジョコンダ」より「時の踊り」

その昔、天智天皇が水時計を設置したのが今の暦でいう6月10日ということで、今日は「時の記念日」です。1920(大正9)年に、生活改善同盟会により「時間を守り、欧米なみに生活を改善しよう」と制定されたそうです。

それからもう85年。今では日本は欧米以上に時間に正確な国となりました。それは悪いことではないと思いますが、先日のJR宝塚線の脱線事故のように"時間"に追われた結果、多くの人々の生活そのものを奪ってしまう大事故が引き起こされてしまいました。
この「時の記念日」にあたり、時間と生活をもう一度見直すいい機会になって欲しいと思います。

今日は「」にちなんで、イタリアのオペラ作曲家ポンキエッリの歌劇「ジョコンダ」より「の踊り」を、シルヴィオ・ヴァルヴィーゾ指揮/ドレスデン国立管弦楽団の演奏で。
この歌劇「ジョコンダ」は、ヒロインのジョコンダがずっと片思いしている恋人と、その人が思い続けていた女性との仲を助けて、自らは自害してしまうという、なんともやりきれない悲劇ですが、この「時の踊り」は物語中盤の舞踏会で披露されるバレエ音楽です。

といっても、私はまだこのオペラを見たことがありません!でも「時の踊り」は人気曲なので、単体で演奏されることも多いですし、私は「時の踊り」のファンです。

この曲は、朝から夜まで時間と気分が変化していく様子を、いろいろな表情とともに描写してくれます。
・・・静かに夜が明け、ぽかぽかした朝をむかえます。こうして一日が始まります。日はだんだん昇っていき陽気な昼下がり、そして憂いのある夕暮れ時となります。やがて、穏やかな湖の水面に月がかかり夜のとばりが降ります。最後は、陽気で情熱的で可愛らしい夜の舞踏会。夜はまだまだ続きます・・・
思わずうきうきさせるこの演奏もなかなかです。こんな時間ばかりだったらいい生活ができるのに...


<追記>
6月8日のサッカー・ドイツW杯アジア最終予選 日本対北朝鮮戦、日本の強さを実感できるようないい試合でした。自ら勝ち取った予選通過、おめでとうございます!
posted by stonez | 2005.06.10 00:00 | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽 - その他楽曲

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」より「そよ風によせて・・・」

映画『ショーシャンクの空に』。妻とその愛人殺しという"無実の罪"で終身刑となり、ショーシャンク刑務所に収監されたエリート銀行マンのアンディ(ティム・ロビンス)。しかし彼は希望を捨てず、自由になれる日を信じて毎日を生きていく。そんな彼と、古株の囚人レッド(モーガン・フリーマン)との友情、そしてそれを取り巻く刑務所の人々を描いた作品です。

スティーヴン・キング原作のストーリーといい、描写やキャスティングといい、とにかく私が一番好きな映画なのですが、その中で印象的なのが次のシーンです。

刑務所の図書館の司書を任されたアンディは、囚人達にも教育が必要と、根気強く州議会に手紙を送りつづけたのですが、ついに200ドルの予算を約束するとの返事と中古図書が送られてきます。その中に「フィガロの結婚」のレコードが。こっそり聴き始めて自由な気持ちになった彼は、放送室の鍵をかけ、ボリュームを一杯にし、看守たちの制止も聞かず刑務所全体に曲を響き渡らせるのです。
運動場にいた大勢の薄暗い囚人達が、スピーカーを見上げたまま立ち尽くす中、ゆっくりと降りそそぐ美しいアリア。そして青く澄み切った空。手の止める作業場のレッドたち。

親友の囚人レッドは、この光景をこう振り返っています。

俺はこれが何の歌か知らない
知らない方がいいことだってある
よほど美しい内容の歌なんだろう...心が震えるぐらいの
この豊かな歌声が我々の頭上に優しく響き渡った
美しい鳥が訪れて塀を消すかのようだった
短い間だが皆が自由な気分を味わった


「知らない方がいいことだってある」・・・私もこの映画を最初に見た時には、歌の内容を知りませんでした。でもそのとき美しいと思ったし、自由な気分に包まれたのを憶えています。

あのシーンで流れた曲は、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」第3幕の二重唱『そよ風によせて・・・』でした。本当はこの歌は浮気者の伯爵をこらしめるために、主人公フィガロのフィアンセと伯爵夫人が偽の手紙を書く歌なのですが、イタリア語がわからないというのもありますが、そのメロディを今聴いてもそんな人間臭いドラマは微塵も感じさせません。

この映画で使用されている演奏は、カール・ベーム指揮のものです。最初はこのアリア聴きたさの為だけに、クラウディオ・アバド指揮/ベルリンフィルのCDを買ったのですが、テンポが速すぎて雰囲気を楽しめず、結局先程のカール・ベーム指揮/ベルリン・ドイツ・オペラによるCDを見つけ、映画と同じ演奏を楽しみました。歌劇「フィガロの結婚」は、是非一度生で見に行きたいと思っています。本物のフィガロを見たら、私はどういう感想を持つのでしょうか。

とにかく、曲の新たな魅力を発見できた貴重な映画だと思っています。
posted by stonez | 2005.05.20 22:03 | Comment(6) | TrackBack(3) | 音楽 - その他楽曲